人口減・高齢化の風速の強さに、改めて全国の自治体が悩まされている。つかの間の好景気下で、「先駆け」「お手本」などと評された施策も多い。だが時はコロナ禍。そんな対策もたちまち通用しなくなる危険性が潜む。

 家の中で見つかったのに、身元が分からない変死体──。桜島を一望できる鹿児島市の北東部、吉野町竜ケ水地区で、ぞっとする話を聞いた。

 警察が調べたところ、すでに白骨化していた遺体はホームレスのものとみられる。見つかった場所はあるじ不在の「空き家」。雨風をしのぐためにその家に入り込んでいたようだった。話を聞いた近所の住民は「いつだったかなあ、ずいぶん前だったような……」。つまり、ずいぶんと前から空き家のまま放置されてきたというわけだ。

 地区内の別の空き家では今なお、ごみの不法投棄やシロアリの大量発生などの問題が指摘され、住民を悩ませ続けている。「空き家一つで住環境は著しく悪化する」。人口3万人余りのここの住民の話を聞く限り、決して大げさな表現ではない。

都内2区に鹿児島市が猛追
●全国の空き家数ランキング
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出所:総務省「住宅・土地統計調査」

 国の調査によると、全国の空き家の数は846万戸(2018年)。自治体比較で最も多いのは約4万9000戸の東京都世田谷区で、同大田区、鹿児島市が続く。鹿児島市は約4万7000戸で、ワースト3位。都内2区の人口や住宅の数などを考えれば、鹿児島市(人口は20年で59万4000人)が3位に入っていることが、いかに深刻か分かる。

 「平成の大合併の落とし物」。背景についてこう語るのは、全国古民家再生協会鹿児島第一支部の西浩隆代表理事だ。鹿児島市は04年11月、吉田、桜島町など周辺5町と合併。面積は約2倍、人口も膨らんだ。だが鹿児島市にのみ込まれた周辺町から順番に人口移動が起き、結果として空き家がたまった。これが西氏が説明してくれた「空き家大量発生」までの経緯である。

<span class="fontBold">全国古民家再生協会の西浩隆氏は「行政の対応の鈍さ」を指摘する</span>
全国古民家再生協会の西浩隆氏は「行政の対応の鈍さ」を指摘する

 対策が進んでいるなら気持ちも多少は和らぐが、市街地では昨今のカネ余りの流れも手伝いマンション建設が進む。これが半ば目くらましの役割を果たし「行政の対応は先送りばかり。真剣さが足りない」。少なくとも西氏の目にはそう映る。全国ではこの数年、事態を深刻に受け止め、まずは売買を仲介する「空き家バンク」の事業を進めるところが出始めた。が、鹿児島市は対応を見送ったまま。時だけが過ぎていく。

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