世界の食糧リスクが顕在化している。2050年までに世界人口は20億人増え、97億人。やがて100億人時代を迎える。地球温暖化は、大雨や乾燥に姿を変えて、農耕地や牧場を襲うだろう。今年大発生したバッタ群や中国の洪水は、食糧枯渇の未来を連想させた。では、日本は何ができるのだろうか。食の工業化では決して後れを取っていない。品種改良も進み、危機を乗り越えるテクノロジーは蓄積されつつある。日本経済を支えた自動車や電機といった主要産業の今後は不透明だ。一方、食糧を産業としてとらえると、人口増とともに確実に需要が増える。食糧への対応は、工業品の輸出が衰えて元気を失った日本企業の力を、「貢献」という形で世界に示すきっかけになるかもしれない。(写真=moose-man/Getty Images)
(北西 厚一、江村 英哲、藤中 潤)
CONTENTS
prologue
バッタ群、豚熱、大洪水……飽食の終わりが近づいている
PART1
人口増、温暖化の二重苦 食糧「格差」が加速する
PART2
未来予測、鮮度長持ち 偏りに挑む日本の技
PART3
枯れた大地も候補地に 食物はどこでもつくれる