多くの企業が毎年当たり前のように実施してきた新入社員教育。今年の新人が順調に育てば、そうした一連のプログラムの意義が問われかねない。実際、その中には能力開発に必ずしも結びつかないものも存在する。

大事なのは、「対面」より「教え方」

 コロナ禍によって、従来通りの形式での教育を受けられていない今年の新入社員たち。とりわけ新人教育の目玉である集合型研修やOJTは、多くの企業でオンラインでの実施に変更された。にもかかわらず現時点で、今年の新人のレベルが例年に比べ低いとの事実はなかなか確認できない。このことから浮かび上がる仮説は次の2つだ。

 ①従来型の新人教育はオンラインで代替できる
 ②もともと従来型の新人教育には大した育成力がない

 まずは仮説①から検証する。

対面でないと育たない?

 2020年春、多くの企業の新人教育担当者が抱いていたのは「対面型に比べオンラインは効果が落ちるのではないか」という危惧だった。

 「緊張感を維持できない」「指導の際、細かいニュアンスまで伝わらない」「同期の間の絆が醸成できない」……。不安の理由は様々で、中には「対面での臨場感がないと気づきも感動も得られない」と考える人もいた。

合宿型研修の老舗がオンライン研修を実施
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社員教育研究所は発声練習や座り方の訓練などを省略。研修期間を短縮し、スピーチなどに特化した
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 「自分たちも最初はそう思っていた」。合宿型社員研修の老舗、社員教育研究所(東京・新宿)の東京企画推進部取締役部長、安田健氏はこう話す。

 1967年に創業し、最長13日間に及ぶ長期合宿をはじめ、新入社員に限らず様々な階層向けに教育を施してきた。そんな同社もコロナ禍には勝てず、2月以降キャンセルが増え、4月の緊急事態宣言後、すべての対面型プログラムを一時的に停止する事態に陥った。

 ただ、新人教育だけはやめたくないというクライアントの要望も多く、3月までに申し込みのあった企業の3割を対象に、オンラインでの指導を実施することになる。実体験が核となる合宿教育をいかにオンライン化するかは今年に入り研究を進めてはいた。

 最終的に出来上がったスタンダード版は、8日間の日程を3日間に短縮したものだ。毎日午前10時から午後6時まで休みを挟んでの7時間のコースで、発声練習や行動訓練(立ち姿勢、礼の角度、座り方)などは省略。その分、ビジネスパーソンとしての意識を高めるための座学やスピーチトレーニング、ディベートの時間を強化した。とはいえ当初は安田氏自身、対面なき新人教育にどれほどの効果があるのか未知数と感じていたという。

 しかし実際に進めてみると、思わぬ発見をすることになる。たとえリモートでも、自分の能力を棚卸しし、足りない部分を見つめ直し、仲間とぶつかり合って課題の解決を重ねた結果、合宿同様、最終日に少なからぬ新人が涙を流すのだ。

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この記事はシリーズ「コロナ後の新人 職場の希望かお荷物か」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。