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分断は米国にとどまらず、世界各地に広がりを見せる。行き過ぎた資本主義が民主主義との共栄を瓦解させている。世界の秩序とルールが崩れる今、日本が取るべき針路とは。

米国の対中強硬姿勢は今後も変わりそうにはない(写真=Pool/Getty Images)

 「(国民は助けを必要としていると言うなら)なぜ民主党はこの25年何もしてこなかったんだ!」。トランプ大統領が声を荒らげれば、バイデン氏が「あなたが状況をめちゃくちゃにしている大統領だからだ。米国史上最低の大統領だ」とやり返す。

 9月29日に開かれた両者によるテレビ討論会。互いを罵り合い、バイデン氏の発言中にたびたびトランプ氏が割り込む様子に米国内では「史上最悪」「子供のけんか」との声があふれた。

 米国政治に詳しい上智大学の前嶋和弘教授は「そもそも両者にとって議論をかみ合わせる意味がない」と一刀両断したうえで、「これだけの分断は、南北戦争にまで遡るのではないか」と分析する。

 トランプ大統領の就任後、顕著となった米国の分断。米国議会での議員の行動にもそれが表れていると前嶋氏はみる。米国では議会での審議には原則、党議拘束がない。党に所属していても自分の意思で法案の賛否を決断できる自由な環境下でありながらも、「9割以上が党の方針を支持している」(前嶋氏)という。その割合の高さは160年前の南北戦争にまで遡るという見立てだ。

 多様性をベースにした民主主義のあるべき姿の確立や自由貿易の拡大など、米国は圧倒的な経済力と軍事力を背景に、世界の規範作りの役割を担ってきた。だが、トランプ政権は北米自由貿易協定(NAFTA)を見直したり、環太平洋経済連携協定(TPP)や地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱したりするなど、グローバル化と国際協調の時計を逆回転させている。

 それは米国内でも同じだ。トランプ大統領は、連邦最高裁判事の選出を急がず、大統領選挙後に実施して民意を反映すべきだという声を無視して、保守派のエイミー・バレット氏の指名プロセスを急ピッチで進める。民主主義の手本としての求心力も失いつつある。

 スウェーデンの調査機関V-Demがまとめる「熟議民主主義指数」は、1に近ければ多様な意見を持つ集団が議論を重ねながら政策を決定し、0に近づけば多数派による横暴、独裁色が強いとするものだ。米国は2007年以降、0.8台をキープしていたが、トランプ氏が大統領選挙に勝った16年には0.77に下がり、就任した17年には一気に0.59まで下落。19年の数値も0.56と低落傾向にある。

日経ビジネス2020年10月19日号 40~43ページより