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各種調査ではバイデン氏有利の形勢が強まっているが、4年前は大逆転もあった。どちらが勝つかを、1984年以降の大統領選を全て的中させた教授に聞いた。両陣営に向けた巨額のマネーの動きも、勝敗を大きく左右しそうだ。

 米国民が次の大統領選で重視する条件の一つが「雇用」だ。PART1で見てきたようにGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)などテック大手に頼るのも一つの手ではある。だが、テック企業に継続的な雇用拡大を頼れない理由がある。自ら開発するAI(人工知能)や自動化の導入で、製造業や石油産業のように中間層の雇用を支え続けるとは考えづらいからだ。

 米労働省労働統計局によると、2020年の産業別年成長率の見通しは、10年比でITが0.5%の成長、製造業が0.1%の縮小だった。最も雇用の拡大が期待されるのがヘルスケアと社会扶助の領域で、年成長率は3.0%だった。

バイデン陣営の方が詳細なプランを示している
●トランプ氏・バイデン氏の政策方針
(写真=上:Bloomberg/Getty Images)

 上の表に、共和党候補のドナルド・トランプ大統領と民主党候補のジョー・バイデン前副大統領が掲げる政策の違いを示した。まず気づくのが、トランプ氏が具体的なビジョンを現時点で示していないのに対し、挑戦者のバイデン氏は細かく明示している点だ。

 いずれも雇用創出の施策としてインフラ投資に1兆ドル以上を投じるという。トランプ氏は今任期中、高速道路や橋などの公共インフラ拡充に意欲を示していた。再選となれば同じ領域に資金を投じるだろう。一方のバイデン氏は再生可能エネルギーなど環境インフラに重きを置く。国内でIT以外の新産業を根付かせる狙いがある。

 トランプ氏が法人税や所得税の減税維持を約束するのに対し、バイデン氏は増税をもくろむ。多くの日本企業が「トランプ氏のほうが自社に有利」と考える理由がここにある。

 今回に限らず、共和党はあらゆる権益を個人に与えることで政府の財源を小さく抑える「小さな政府」を目指してきた。一方の民主党は、全ての国民に最低限の生活や医療を保障するため大きな財源を持つ「大きな政府」を目標としてきた。米国が直面する社会的状況や経済環境によって、右に触れたり左に触れたりしてきただけなのだ。

 この原則に基づき、1984年から一度も外さずに大統領選の勝者を当ててきた人物がいる。アメリカン大学のアラン・リクトマン教授だ。

日経ビジネス2020年10月19日号 34~39ページより