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 首都ワシントンからクルマで北上して約30分。米国の新型コロナウイルス研究の最高峰である米国立衛生研究所(NIH)の目と鼻の先に、ウォルター・リード軍医療センターはある。

 ドナルド・トランプ米大統領が新型コロナに感染し同センターに入院したのは10月2日。直後から、「TRUMP」と書かれた旗や星条旗を掲げる支持者が集い始めた。ペンシルベニア州やフロリダ州から何時間もかけてやってきて、車中泊でしのいだ人もいた。

 4日午後0時24分、数百人に膨らんだ民衆から突如、歓声が上がった。

 「トランプ、トランプ、トランプ!」。掛け声が響く中、黒塗りのSUV(多目的スポーツ車)が車道を走り抜けていく。後部座席に座るマスク姿のトランプ氏は大衆に向け親指を突き上げた。高まる熱狂。「神のご加護を!」。走り去るSUVに向かって一人が叫んだ。

 米国民は今、現職大統領を支持するか否かで真っ二つに割れている。トランプ支持者にとっては「粋」なこのサプライズも、不支持者から見れば非常識極まりない。「警護隊員の命を危険にさらしてまですることか」。地元左派メディアは一斉にこう非難した。

 交わることのない平行線。だが一つの線だけを見ていては米国の真実は見えてこない。どちらが正しいか、ではなく、どちら側もそこにいる人たちにとっては正しいからだ。