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コロナ禍で小さなヒットを積み重ねるために必要なヒットの新法則。だがそれを頭に入れただけで行動しなければ、活路は見えてこない。ヒットの新法則を最大限に活用するため、企業がやるべきことを考える。

小林製薬はコロナ禍で製品の長所を見つめ直している。オードムーゲ(右)はマスク着用により需要が伸びる。食物繊維がとれるイージーファイバー(左)も好調(写真=商品:スタジオキャスパー)

 市場の小さな動きや、今まで見落としていた消費者の“声なき声”を丁寧に拾うためには、何はともあれ、自社製品のことをもっと知ることが欠かせない。消費者がどんなところに魅力を感じ、どうやって購入し、どう使っているのか。まずはそれらを改めて知ることがすべての出発点だ。

既存商品を把握し直す

 まさにそんな作業を今、実践しているのが小林製薬だ。新製品が多いことで知られるが、約150のブランドで1000種類ほどの既存製品があり、商品価値や購買層、購買動機などの洗い出しに各事業部が日々取り組んでいる。

 その成果としてヒットしているのがスキンケアブランド「オードムーゲ」。

 主力の薬用ローション製品はコロナ禍に左右されにくいカテゴリーだが、3~8月の出荷数量が100万本を超え、前年同期比約120%となった。洗顔剤などを含めたブランド全体でも過去最高の売上高を更新している。

 オードムーゲは小林製薬の中で異色の存在だった。2013年に開発、販売元の会社を買収。ブランド名は60年前から浸透させており、固定のファンがいる。変更する選択肢はなく、「熱さまシート」のような分かりやすい名前で使い方を訴求していく得意の手法が使えなかった。そこで「くり返すニキビ・肌あれ予防を考えた」というキャッチコピーで認知度を高めてきた。

 コロナ下での好調な販売のきっかけは外出の際にマスクが不可欠となった4月上旬、営業担当者が販売店でこんな声を耳にしたことだった。「マスクのスレやむれで肌荒れを気にする人が増えオードムーゲが使われ始めている」。オードムーゲを売り込むプロジェクトが直ちに動き始めた。

 マーケティング、販売、製造が連携しながらリモート勤務で準備を進め、5月末にはネット上に「長時間のマスク ニキビの原因になっているかも」というバナー広告の掲載を始めた。「SNSでも発信し反響がさらに広がった」(ブランドマネージャーの鳥原宏之氏)

 同社は、食物繊維がとれるトクホ食品「イージーファイバー」でも、購買動機などを改めて確認。その結果、「通勤時間がなくなり、運動量が減った在宅ワーカーが購入している」とみて、動画やバナーの広告で「最近、お通じがないかも…在宅ワークなどで運動不足?」などの形で訴えた。3〜8月の出荷数量は約70万個と前年比116%となった。まさに自社商品を改めて知ることが、新しい「商品の打ち出し方」のヒントになった例といえる。

 自社の商品やサービスがどう消費されているかを細かく把握していれば、コロナ禍での経営判断もより的確になる。

 マッシュホールディングス(東京・千代田)が子会社を通じて運営するルームウエアブランド「ジェラートピケ」。素材や手触りにこだわったかわいらしいデザインの部屋着だが、価格は上下で1万円台前半と決して安くない。

日経ビジネス2020年10月12日号 36~41ページより