全7068文字

小さなヒットを効率的に量産するには、従来にはない発想が必要だ。レッドオーシャンには手を出さない、「売りにくい商品」は敬遠する……。そんな既存のヒットの法則は、今物を売るうえではかえって邪魔になりかねない。

湖池屋の髙戸氏は「『こういうポテトチップスを待っていた』という反響がある」と話す(写真=栗原 克己)

 ポテトチップスのシェア首位カルビーにあの手この手のゲリラ戦を仕掛ける老舗、湖池屋がヒットを飛ばした。

 2017年にブランドを立ち上げ、今年2⽉にリニューアルした「プライドポテト」。業界で成功の目安といわれる年間売上高20億円を4カ月で達成した。通常品に比べ20~30円高いが、8月末まで前年同期比297%の売れ行き。9月までの主力4フレーバーの出荷数量は3300万袋となったもようだ。

 4種の1つ、「芋まるごと 食塩不使用」が販売を盛り立てている。塩を使わないポテトチップスは世界でもほとんどなく、健康志向の中高年や素材の味を楽しむ若い女性を捉えた。同社マーケティング部の髙戸万里那氏は「『こういうポテトチップスを待っていた』という反響が想定以上にある」と話す。

 ヒントは以前に手掛けた別の製品にあった。若い女性をターゲットにディップして食べる素揚げタイプのポテトチップスを発売したところ、想定しなかった中高年が多く購入した。食塩を使わないポテトチップスに需要があることは、1967年に日本で初めてポテトチップスを量産し始めた同社にとっても「目からうろこだった」。

 都内の50代の女性会社員は「塩分を気にしてポテトチップスを食べなくなっていたが、これなら楽しめる」と話す。

スナック市場有数の激戦分野

 ポテトチップスはスナック市場を代表する激戦分野。大きなヒットを狙うときは、こうしたいわゆるレッドオーシャンは避け、未開拓のブルーオーシャンに新製品を投入するのが定石だ。だが、小さなヒットを積み重ねるなら、あてどなくフロンティアを探すより、既存商品に対する消費者の不満を解消したり、要望を実現したりする方が効率がいい場合がある。武蔵野大学の宍戸拓人准教授は「ビジネスが洗練されていく中で、前提から外れた製品特性や、想定しなくなった顧客に今こそ目を向けるべきではないか」と指摘する。

日経ビジネス2020年10月12日号 30~35ページより