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かつて懐疑的な視線を向けられることも多かったエシカル消費が伸びている。ブームの主役は若年層で、消費の一大潮流になるかは未知数だ。先行企業が注力するのは、市場の小さな動きの重要性に気づいているからだ。

「オールバーズ 原宿店」。製品ごとに、温室効果ガスの排出量を計測し、顧客に開示している(下)

 東京・JR原宿駅前のスニーカー店「オールバーズ」。2016年に米国で誕生し、環境に配慮した製品開発で知られる。靴の生地やソールには、ユーカリの木やサトウキビなど自然由来の素材を使う。製品ごとに素材の調達から製造、廃棄に至るまでに排出する温室効果ガスの量も開示している。価格は1万円台が多い。

 創業から5年足らずでEC(電子商取引)による販路が35カ国に広がり、実店舗も7カ国に20店舗ほどを開いている。原宿店は日本1号店として1月に開業し、世界の店舗別販売額でトップ。オールバーズ合同会社の竹鼻圭一代表は「サステナビリティーに興味を持つ人が日本にどの程度いるか懐疑的だったが、思った以上に受け入れられた」と話す。

静かなブームの域を出る

 環境や人権に配慮した商品を購入するエシカル消費はこれまで度々話題になってきたものの、ビジネスとしては静かなブームの域を出なかった印象が強い。高コストのため総じて価格が高い。お金に余裕のある人や環境意識が極端に高い人のための製品──。多くの人が抱く印象はこんなところだったのではないか。

 しかし、今、財布のひもを緩める上で、環境関連をはじめとする企業の「善行」を強く意識する消費者が増えている。オールバーズで靴を買った男性会社員は「自分でもよく分からないんだけど、コロナ禍で人生観とか世界に対する見方みたいなのが変わって、どうせ消費をするなら良い企業の商品を買おうと思うようになった」と話す。

 消費者庁の今年2月の調査によると「エシカル消費につながる商品・サービスを購入したことがあり、今後も購入したい」と回答した人の割合は35.5%で、4年前に比べ7.1ポイント増えた。「購入したことはないが、今後は購入したい」と答えた人も45.7%と12.3ポイント増。関心を持つ層は増えている。

日経ビジネス2020年10月12日号 26~27ページより