財政は健全なのにコロナ禍でも慎重姿勢が目立つ中国の経済政策。背景には推定43兆元(約665兆円)に上る巨額の「隠れ債務」がある。リーマン・ショック時の4兆元(約62兆円)対策も、今なお中国経済のくびきだ。
「1カ月前倒しで4万5000の基地局配備を完了した」。8月17日、広東省深圳市は中国で初めて市内全域を高速通信規格「5G」ネットワークでカバーしたと発表した。
中国では5Gの基地局配備が急ピッチで進んでいる。ただし、5Gが全面的にカバーされていない多くの地域では、4Gとの混在で使わざるを得ず、通信速度が落ちるエリアが残っている。深圳市は通信機器世界大手の華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)のお膝元である。そのプライドにかけて5Gのフルスペックの性能を遺憾なく発揮できる環境をいち早く整えた。

「後遺症残さず」強調
こうした5Gネットワークの整備は、中国がコロナ後の景気回復を目指して打ち出した経済対策の象徴的な存在だ。中国は5GやAI(人工知能)、EV(電気自動車)充電ネットワークなどデジタル関連のインフラ整備事業を「新基建(新型インフラ建設)」と総称し、経済対策の目玉に位置付けた。
そのほか、老朽化が進んだ住宅街を改修して先進的な都市にすることや、水利・交通などのプロジェクトを対象として挙げている。一時的な景気刺激策に終わらせず、コロナ禍を奇貨としてデジタル立国の基盤を整備していく狙いが鮮明だ。
一方、5月末に開催した最高権力機関、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、李克強首相は「優良なプロジェクトを選定し、後遺症を残さずに投資の効率と効果を持続的に発揮させなければならない」と強調した。各国が財政赤字を恐れず大盤振る舞いに突き進む中で、中国はなぜ慎重姿勢を崩さないのか。

Powered by リゾーム?