行政・医療・教育。コロナ・ショックは日本のデジタル化の遅れを痛感させた。先駆的にデジタル化に取り組む企業にも規制・慣習が立ちはだかる。アナログがこびりついたままの日本では、国際競争力も低下する一方だ。

 花王の子会社で、業務用消毒液や洗剤などを製造・販売する花王プロフェッショナル・サービス(PS、東京・墨田)には毎日、取引先から1300枚近い注文書がファクスで届く。委託先の担当者は毎朝、ファクスでの注文内容を確認して手入力し、出荷の手続きをする。翌日に取引先へ届けるには、入力を午前中に終える必要がある。

 だが、中には文字の判別ができないものなど、確認が必要な注文書が毎日100枚ほどあるという。それぞれ営業担当者が取引先に電話で確認し、正しい内容を聞いてパソコンに入力する。確認作業には1枚30分ほどの時間がかかることもあるが、それでも正午までに入力を済ませなければならない。

 量販店で販売している花王の家庭向け製品の多くは流通業界向けの受発注システムを使って注文が来るため、ほぼ電子化されている。だが、業務用製品の取引先は病院やホテル、公共施設などが中心でそのシステムは使えない。独自にシステムを構築できるところは少なく、今でもファクスが主流なのだという。

 花王は2017年に一念発起し、「一掃作戦」を開始した。5000を超えるファクスを使う取引先に対し、業務用製品もオンラインで注文できる環境を整えた。一時は取引先の約45%が電子化し、1日のファクスの注文数も1000枚近くに減らすことができた。

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