運用厳格化、新卒にも適用へ

 実際、運用面でジョブ型をどのように定着させるかは大きな課題だ。2017年から約5000人の管理職にジョブ型を導入済みだった三菱ケミカルの課題もそこにあった。ジョブ型にはしたものの、配置を決めるのは上司。その際にはどうしても入社年次が頭をよぎり、年功的な要素が残ってしまっていた。

 そこで今年10月から制度を刷新。公募制を導入しプロセスの公平性と透明性を高めることで、上司の意向だけでは部下の配置を決められないようにして、ジョブ型を厳格に運用する。

<span class="fontBold">中田るみ子取締役は「多様な人材が100%輝いてこそ、時代の変化に対応して、会社は成長できる」と話す</span>(写真=竹井 俊晴)
中田るみ子取締役は「多様な人材が100%輝いてこそ、時代の変化に対応して、会社は成長できる」と話す(写真=竹井 俊晴)
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 かつて三菱ケミカルは、新卒で入社した社員のほぼ全員が定年まで勤め上げる同質性の高い組織だった。だが近年、途中退社も中途入社も増加。共働きが増え、子育てや介護との両立も全社的な課題だ。キャリアを主体的に築けるジョブ型を、個々の事情に配慮しつつ多様な人材を生かす手段にする。

 中田るみ子取締役は「これからは多様性をもっと引き出さないといけない。金太郎あめでは今のように変化の激しい中では生き残っていけない」と話す。

 ジョブ型の導入は管理職、そして既存の一般社員へと進むのが定石だが、労組との交渉が必要な一般社員への適用を飛び越えて、21年4月に入社する新卒社員への展開をいち早く決めた企業もある。KDDIだ。

<span class="fontBold">KDDIの人事本部長、白岩徹執行役員</span>
KDDIの人事本部長、白岩徹執行役員
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 「KDDI版ジョブ型人事制度」を導入すると7月に発表。ひと際目を引いたのが、新入社員の一律の初任給撤廃だ。労組との協議が始まった段階の一般社員に先立ち、来年の新入社員に新人事制度を適用する。4割はエンジニアや営業など11職種別の採用で、入社前のインターンシップを通じてスキルに見合った報酬を設定。2倍程度の給与の差が生まれる可能性もある。

 この人事制度はコロナ禍以前から検討していた。執行役員で人事本部長の白岩徹氏は「若手からは年功序列への疑問があり、優秀な人材の離職が増えている」と背景を語る。「大学で学んできた知識を生かそうと、強い意志を持って入社する人が増えている。配属先が未定でビジネスマナーから学ぶ従来の一括採用はもはや無理だ」(白岩氏)

 富士通、三菱ケミカル、KDDIの3社の事例から浮かび上がるのは、以前から検討していた人事制度改革を、コロナ禍を機に一気に加速させようという、会社側の強烈な意志だ。それは、感染防止対策として半ば強制的に導入せざるを得なかった在宅勤務についても当てはまる。これまで、労務管理の難しさなどを理由に、在宅勤務に後ろ向きな大企業が多かったが、ここにきて風向きが変わってきた。