新型コロナウイルスは、たった半年で日本人の「働き方」を一変させた。在宅勤務は日常となり、多様な働き方は従来の会社と個人の関係を揺さぶる。「失われた30年」──。停滞の原因の1つとされる日本型雇用は、今度こそ変われるか。(写真=Jacobs Stock Photography Ltd/Getty Images)

「“モーレツ社員”という考え方自体が否定される日本にしていきたい」──。辞任を決めた安倍晋三首相は4年前の9月2日、「働き方改革実現推進室」の開所式でこう宣言した。その後、時間外労働の上限規制や有給休暇取得の義務化、同一労働同一賃金の推進など、様々なメニューで「働き方改革」を推進。産業界を巻き込んだ大ブームとなった。

 日本の高度経済成長を実現し、残業をもいとわず会社に人生をささげるモーレツ社員を生み出してきた日本型の雇用モデルは、これまで何度も修正が試みられている。だがそれは、今も根強く残る。このままではグローバル化や急速な技術革新に対応するための人材を引き寄せられない──。危機感から昨年、豊田章男・トヨタ自動車社長や中西宏明・経団連会長が相次いで日本型雇用の限界を指摘。企業も個人も、いよいよ変革のときかと身構えた。

 そして、ついに号砲が鳴った。新型コロナウイルスの感染拡大である。

 感染予防のために緊急避難的に実施した在宅勤務はこれまでの働き方改革を一気に加速。その動きと呼応するかのように、年功序列や終身雇用といった概念がそもそもない、日本型雇用の真逆とも言える「ジョブ型雇用」を採用する動きが大企業を中心に急速に広がっている。コロナ禍という外的ショックを奇貨とするかのごとく、新たな制度や取り組みへとまい進する。

 そこには、どのような狙いや課題があるのか。まずは、オフィス面積を半減し、ジョブ型の全面採用へとかじを切る、富士通の決断から見ていこう。

(庄司 容子、奥平 力、小原 擁、定方 美緒)

CONTENTS

PART1
ジョブ型、在宅、単身赴任解消、副業受け入れ……経営判断の舞台裏

PART2
独自調査で判明「ジョブ型に半数が賛同」、断て!失われた30年

PART3
多様な働き方を認め合う、パーパスと生きざまを会社も個人も再定義

日経ビジネス2020年9月14日号 24~25ページより目次