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新型コロナウイルス下こそ、「正しいこと」の追求が重要だと内外に発信し続けている。自国ファーストや自社ファーストの風潮に警鐘を鳴らし、目指すのは「本業での社会貢献」だ。このままでは日本が沈むというかねての危機感は、コロナで強まった。

(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

(写真=的野 弘路)
PROFILE

柳井正[やない・ただし]氏
1949年生まれ。早稲田大学卒業後、ジャスコ(現イオン)に入社。72年小郡商事(現ファーストリテイリング)入社、84年社長。2002年に会長に退いたが、05年に復帰した。17年に「無駄なものをつくらない、運ばない、売らない」などと掲げる「有明プロジェクト」を開始。他社との協業で自動倉庫やビッグデータを活用した商品企画などに取り組む。

新型コロナウイルスは社会や企業にどんな影響をもたらすと見ていますか。

 コロナの影響ばかりをみんな語っているんだけど、その1年ぐらい前から景気は悪かったと思います。政府の発表だけ景気がよかった。コロナによって景気悪化が本物になったということではないでしょうか。そしてコロナで10年、歴史が早く回転し始めた。限界点が、思っていたより早く来た。変わるんだったら今でしょう。そもそもこの30年間、残念ながら日本経済は成長していませんよね。

コロナ下で企業の優劣も明確になると思います。勝ち残りを決める要因は何だとお考えですか。

うわべだけのものがばれ、本質が求められている。社会が良くなることに意義を見出す人でないといけない。(写真=的野 弘路)

 ほとんどの企業が迎えているピンチをチャンスと捉えられるかどうかということだと思います。世界はコロナで変わったんじゃない。うわべだけのものが全部ばれ、本質的なものが要求されるようになったということです。

 企業も政治家も官僚もそうでしょう。企業は業績悪化をコロナのせいにしているけれど、ちゃんとした経営をしていない企業は以前からしていないんですよ。それではだめ。変わる時代に合わせて行動、実行しないといけない。

新型コロナの発生前から、負の遺産がたまっており、惰性でやってきた企業は今度こそダメになるということですか。

 惰性でやってきたけど、急に変化のスピードが速くなった。これ以上になると本当に潰れるか、廃業するか、買収されるか。そういう時代になったということです。

日経ビジネス2020年9月7日号 52~55ページより