日本は本当に30年を失ったのか
佐藤裕介氏[ヘイ社長]

(写真=的野 弘路)
(写真=的野 弘路)

 バブル経済崩壊後の日本は「失われた30年」と表現されることが多い。1984年生まれの私はその環境を当たり前に過ごしてきた世代だ。

 30年を振り返ると、米国のように資本効率の高い領域、つまりソフトウエアに資本を集約していく国が強かった。だが、その選択は同時に貧富の差を生み出した。そして米国では30年続いた成長の反動とでもいうべき内包してきた問題が一気に爆発しかけている。

 先人が国民総意で選択をしてきた結果の今を私たちは生きている。経済成長という点で米国には後れを取ったが、国民間の分断は比較的少ない。

 時代の節目で何かを選択するということは、トレードオフ(相反)の結果も許容するということだ。結局すべてを総取りすることはできない。日本の成長期を知る50代以上の人たちと異なり、私たちは今の日本の状況を悔しいと思える世代ではない。むしろ日本がこの30年で培ってきたものを次の時代に生かしていく世代だ。コロナ禍は一つのきっかけになると思っている。

 例えば、日本のローカル経済では資本主義経済の原理にのっとれば進むはずの寡占化が進まなかった。日本における商売とはライフワークであり、ファミリーのアイデンティティーと深く結びついている。

 日本はこの30年で多様性を残した。コロナ後の経済はEC(電子商取引)とローカル経済に収れんされる。人も金も、資本集約的から分散的になっていくだろう。そして日本はローカル経済で活躍する人材層が分厚い。デジタルを武器に挑戦できる環境が用意できれば、次の時代の主役になれるはずだ。(談)

「右向け右」の時代は終わった
米良はるか氏[READYFOR・CEO(最高経営責任者)]

(写真=的野 弘路)
(写真=的野 弘路)

 私たちは資本主義の世界でお金が流れにくい分野に、お金が流れる方法を編み出していく会社。新型コロナウイルスの感染拡大という危機的状況下で、クラウドファンディングが「今を守る力」や「未来を創る力」を持っているということを改めて認識した。

 一方で、共助の世界で回るお金の流れはもっと広がるべきと思った。国のお金を待つ、政府の意思決定を待つという状況ではない。私たちはテクノロジーを味方にして、情報を得られる時代を生きている。

 もはや「右向け右の時代」ではない。人口減少が続く中で、政府の役割はより小さく、民間の役割こそより大きくしていかなければならない。自分たちの未来、自分たちの社会を自らの力で変えられるはずだ。

 資本主義の世界、例えば金融機関による融資は、最も明確な基準が利益を出せる会社かどうか。当然、数字を見て判断する。一方、クラウドファンディングの良さは決して数字だけではなく、これまでは見えなかった価値の可視化が急速に進むこと。

 寄付よりも応援のイメージが強い。こういう社会を目指したいから応援する、こういう未来に向けて挑戦したいから頑張る。こうしたアクションを促すテクノロジーが目の前にある。

 働き方も今回のコロナ禍を機に変わるべき。企業は個々人の幸せを追求して初めて事業に持続可能性を持たせることができるようになる。

 気を付けなければならないのは人は忘れがちという点。景気が良くなるとすぐに目をつぶってしまう。すべての災害はもはや人的災害。「100年に1度」ではなく、5年に1度と考えて動かなければならない。(談)