全2479文字
佐賀県は教育のIT化で他の都道府県に先行している(写真は佐賀県内の中学校でのオンライン授業の光景)(写真=朝日新聞社)
●小中学校・高校などへの教育用コンピューターの整備率
注:2019年3月時点、文部科学省資料を基に本誌作成

 新型コロナウイルスの感染拡大を機に、各自治体の取り組みやトップの発言が今まで以上に注目を浴びている。政府の感染拡大防止策や、「Go Toトラベル」をはじめとした経済喚起策には不満を示す国民も多い。市民の声を受け止め、国に先んじて最適な手を打つためにも、自治体や地域の主体性が改めて問われている。

 「地域のリーダーと住民がどういう街を構想し一緒に創造していくのか。地域が選別される時代だ」。こう話すのは佐賀県の山口祥義知事。佐賀県は2月末の政府の休校要請以降、オンライン授業などへの対応で混乱を極めた教育分野で独自の施策を取っている。

 政府は2019年に小中学校で生徒1人1台のコンピューターを配備することを柱とした「GIGAスクール構想」を掲げた。当初は23年度中に「1人1台」を実現する計画だったが、コロナ禍の中、十分な形で遠隔授業を実施できた学校がごくわずかだったこともあり、21年3月末までに配備を済ませる方針を決めた。

全国平均の3倍のPC整備率

 ただ実現性を疑問視する声は大きい。文部科学省によると、19年3月時点の全国の公立の小中学校・高校などへの教育用コンピューターの整備率は18.6%。予算不足や機器の在庫不足などが配備の遅れの背景にある。

 そんな中、佐賀県は14年から県立の全高校で生徒1人に1台、タブレット端末を整備している。市町村による小中学校へのPC配備も進んでおり19年3月時点の小中学校・高校の教育用コンピューターの整備率は53.9%。全国平均の約3倍、都道府県別で断トツだ。

 佐賀県が独自に高校へのタブレットの導入を決めた背景の1つには07年に始まった小中学生を対象とした全国学力テストの結果がある。佐賀は鍋島藩の時代から教育熱心な地域だが、学力テストの結果は40位前後と低迷。タブレットの導入で動画などを織り交ぜたデジタル教材を授業に取り入れたり、個別の習熟度に応じた学習を実現したりするなどして教育の質を高められれば──。そんな考えがあったようだ。

 課題も噴出した。14年の開始当初は生徒側に5万円を負担させ、端末を購入する形を取った。ただ負担の大きさが課題となった。そこで18年度以降に入学する学生には端末を無償貸与する方針に変えた。今後、他の自治体や学校が直面するだろう課題を一足早く経験し、乗り越えたわけだ。

 もちろんタブレットはあくまでツールでしかない。子どもや教員に使い方を提示することが必要だ。佐賀県は「プロジェクトE」と題し、今年4月から日常的に遠隔授業を展開できる体制を構築しようと動き始めた。

日経ビジネス2020年9月7日号 34~35ページより