百貨店業態の限界に早くから気づき、テナント中心へと事業を入れ替えてきた。だが、新型コロナは人を集めるという百貨店と不動産の行為そのものにストップをかけている。業界に新モデルを持ち込んだ業界最大手はどこに活路を見いだすのか。

(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

(写真=的野 弘路)
(写真=的野 弘路)
PROFILE

好本達也[よしもと・たつや]氏
J.フロントリテイリング社長。1956年、大阪府生まれ。79年に慶応義塾大学経済学部を卒業し、大丸に入社。2000年に札幌出店計画室札幌店開設準備室部長として大丸札幌店の立ち上げにかかわる。08年に同社東京店長。10年3月の大丸と松坂屋の合併と同時に、大丸松坂屋百貨店の経営企画室長に就任する。12年同社取締役を経て、13年同社社長。持ち株会社のJ.フロントリテイリングでは13年取締役、20年5月から現職。

新型コロナウイルスの流行は第2波が広がっています。どのような影響が出ていますか。

 5月に社長に就任し、緊急事態宣言が解除されて店舗は再開できました。さあ、これから回復だという形になっていた中で、第2波が来ました。いつか来るかもしれないとは考えていましたが。店頭の販売額は6月が前年同月に比べ29%、7月は26%減少しています。かなり我慢をしながら安全・安心への対応をもう一回強化しています。

 最初のうちは今年の後半ぐらいには、と思っていましたが、それは到底無理だなという状況です。この状況の中では、もう我慢できるものは全部我慢しようと。いわゆる変動費的な経費だけじゃなく固定的なもの、あるいは今までテッパンのように必ずやってきたイベントなども安心、安全に問題があるか、もしくはその催しが赤字ならやめています。中元では、商品展示もアルバイトや派遣もやめ、徹底した経費対策をやっています。6~8月期は百貨店事業もJ.フロント全体も何とか黒字が出そうなところまではきました。

 この後どうなっていくかというのは分からないですね。1週間前、あるいは1週間後でも違う状況になっているかもしれない。ただ、短期的な売り上げをここで追い求めても、いいことは何もない。お客様への直接のアプローチも今、進める状況ではないです。

生態系の頂点にいた

従業員も不安でしょう。

 大丸も松坂屋も100年単位の歴史があり、社是としてお客様第一主義と社会貢献を考えてやってきました。4年前に決めたグループビジョンは「くらしの『あたらしい幸せ』を発明する」。今この状況で、我々はやっぱり結果的にこれに立ち返っていくと全社員にメッセージを送りました。今まさに我々に求められていること。厳しい状況だけど、必ず朝は来る。ただ、晴れ渡った空になるか曇った空になるかは我々次第だと伝えました。

次ページ 小売りの名をかたる不動産業