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百貨店は、未来への処方箋を描ききれず、生き残りの岐路に立つ。復活の決め手は、これまでの「百貨店」像にすがらないことだ。小売りの歴史を作ってきた「革新のDNA」の真価が問われている。

8月1日、新宿マルイにオープンした展示・販売スペース「b8ta(ベータ)」

 百貨店を蘇らせるヒントはどこにあるのだろうか。百貨店ではなく、その“外縁部”で変化の胎動が起きている。

 「小売りの未来を象徴する店舗だ」。ファッションビルの丸井。青野真博社長は米シリコンバレー発祥の展示・販売スペース「b8ta(ベータ)」をこう評する。8月1日、新宿マルイ本館1階にオープンした。スタートアップなどが開発した斬新な製品を、賃貸した棚に展示するスペースで、目新しい電気製品や日用雑貨が並ぶ。出品者の多くはネット直販が中心の「D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)」企業だ。

丸井の「売らない」店舗

 不特定多数の客が集まる駅前立地の強みを生かし、ベータから棚の賃料収入を得る。EC(電子商取引)でしか買えない商品が多く、青野氏は「ここではモノを売らなくていい」と話す。

 丸井は1980年代のDCブランドブームに乗って成長したが若年人口の減少などで2000年代からビジネスモデルに陰りが見えた。そこに重なったのが近年のD2Cブランドの台頭。「スマホでどんな商品でも買える時代にわざわざ店頭に行く理由は小さい」と言う青野氏。危機感に対する解が、店舗を「発見や体験の場として捉え直す」ことだった。既成概念を排した丸井はモノを売らない店に進化しようとしている。