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過去に類を見ない同時多発的なサプライチェーン(供給網)の分断を経験した日本企業。もっとリスクに強い体制を構築するチャンスと捉えて動き始めた。米中摩擦も激しく、地域や国の分断がいつでも起こり得る想定で競争力を磨く。

 「さらに地産地消を徹底しなければならない」。ダイキン工業でグローバル調達を担当する竹内牧男執行役員は、新型コロナウイルスの感染拡大によるサプライチェーンの混乱を乗り切った今、こう話す。

 市場に近いところで生産する「市場最寄化(しじょうもよりか)生産」と呼ぶ基本方針を掲げるダイキン。世界を日本・中国・欧州・米州・アジアの5極に分けて調達、生産する体制を20~30年かけて築いてきた。地震や洪水など災害に加え、国家間の貿易摩擦などの問題で生産が止まるリスクを下げようとした結果だ。強い供給網を持つ優等生とされるダイキンですら、薄氷を踏む思いをしたのがコロナ禍だった。

 「日本の在庫はあと2週間分しかない。欧州に送る部品を急きょ、日本に送ってもらえないか」。中国の工場やサプライヤーの稼働が止まった2月、真っ先に影響が出たのが日本の工場だった。需要の低迷もあって、結果的に生産停止には至らなかったが、竹内氏は「あと2~3カ月遅ければ夏前の空調の需要期にかかり、販売機会を失っていたかもしれない」と話す。

 ダイキンは地産地消を進めつつも、価格や品質の観点を重視する一部の部品は、特定の地域から集中購買してきた。空調機の集中購買の部品点数は全体の約3割。圧縮機やプリント基板を中国などから世界の工場に届けていた。コロナ禍ではそうした部品の一部が日本で不足し、生産を止めかねない状況に陥った。「3割のうち半分近くが中国。偏りすぎていた」と竹内氏は反省の弁を口にする。

サプライヤーに競争を促す

 ダイキンが考えた戦略は、現在7割の地産地消を100%に近づけることだ。十河政則社長は「年単位の時間がかかるかもしれないが、地域のサプライヤーを育てていく」と話す。

 すでに、5極それぞれの地域サプライヤーの洗い出しを始めている。「もう一度、強みと弱みは何なのか調べてくれ」。竹内氏は世界各地域の調達部門とのオンライン会議で号令をかけている。

 ダイキンが目を付けた企業には、集中購買先のサプライヤーの最安値をベンチマークに、生産性の改善の方法を伝えていく。集中購買先のサプライヤーとの競争を促し、コストを下げる。

 安いコストと品質を両立できる新たなサプライヤーを世界各地で発掘・育成するハードルは高い。100%地産地消を目指すなら、「集中購買先のサプライヤーに各地域に進出してもらう交渉も必要になる」(竹内氏)という。

 5つの地域それぞれの中で、必要な部品がすべてそろう体制を築くことができれば、サプライチェーンは一層柔軟になる。新型コロナの感染の再拡大によって、どんな部品が足りなくなっても、他の地域から調達できる。

 サプライヤーの開拓と両輪で、取引先を一層見える化するシステムの新たな構築に乗り出した。単に企業の名前や所在地を把握するのにとどまらず、サプライヤーがどれだけ在庫を持っているかを把握できるようにする。

日経ビジネス2020年8月17日号 36~41ページより