原則として、人や組織が成長するためにはやはり適正な目標設定が必要だ。コロナ禍でノルマを続けるには、売る力を今まで以上に鍛錬していくしかない。今もモノを売り続けている人の工夫から「コロナに克つ営業術」の基本を考える。

日産プリンス 伊藤数馬 氏
<span class="fontSizeM textColNavy">日産プリンス 伊藤数馬 氏</span>
20年近く社内で営業成績トップを誇り、社内表彰では「殿堂入り」を果たした。コロナ禍でも、年間販売100台以上のペースを維持する

 販売環境が悪化する中で高いノルマを維持すれば、不祥事の温床になりかねない。だが、目標設定がないと会社や社員は成長力を失う恐れがある──。そんな八方塞がりの状況にある日本企業の営業部門。こうなると、独創的な経営モデルでも天才型人材が居並ぶわけでもない「普通の会社」が、選択できる道は主に2つしかない。

 一つは目標設定制度を廃止し、ある程度成長を諦めること。もう一つが現状のノルマ制度を維持しつつ、売る力を伸ばすことだ。販売力を底上げし、厳しい環境でもノルマを達成できる状況になれば、不祥事やモチベーション低下の危険性は当然消えていく。とはいえ、昭和の時代からあらゆる営業を研究してきた日本企業。人口減に加え景気後退も進む中、販売力の伸びしろなどあるのかという声もあるはずだ。

 結論から言えば、ある。今後、営業の舞台が「接触型」から「非接触型」へ大転換する可能性が高いからだ。非接触型営業は、先進IT企業など一部を除き、多くの会社にとって未知の領域。その分、研究や進化の余地もあるはずだ。

 オンライン営業で売る力を伸ばすには、専用ツールを充実させることも重要。だがそれだけでは不十分だ。

 「非接触型の営業で最も重要なのは、PC画面などの向こうにいる人に、自分の話を聞いてもらう力」。企業研修などを手掛けるインプレッション・ラーニング(東京・中央)の藤山晴久社長はこう話す。

 どんな人でも、膝を突き合わせて対面する相手と、ウェブ上での会議の中の相手とでは、「伝える力」が変わってくる。ましてやリモートワークで自宅にいる人に営業するとなれば、相手は家事をしたり、テレビを見たりして商談に応じているかもしれない。

 今回の取材で、多くの販売部員が「5割以上実績が落ちた」と嘆くオンライン化。その背景には、不慣れや環境の不備以上に、“PCの画面越しだと相手はこちらの話をそもそも真剣に聞かない”というある意味で「当たり前の現実」があるわけだ。

 それでも世の中には、オンライン営業に移行しても以前と変わらぬ成績を上げる人もいる。そうしたスーパー営業部員はどうやって、「上の空」かもしれない相手を振り向かせているのか。彼らの工夫からは、2つのシンプルな原則の活用が強く見て取れる。