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資本効率や株主価値を重視し、「筋肉質な経営」を志向する時代が続いた。しかし、コロナ禍で「余裕なき企業」が危機に立たされ、価値観が揺らいでいる。不測の事態を乗り切る企業は、独自の経営哲学に基づく「ゆとり」を持っていた。

無駄をそぎ落とした「筋肉質」な経営体質への礼賛や憧れは強い。だが、それだけでは「予測不能な危機」に対応しきれない恐れがある(写真=PIXTA)

 「選択と集中」「持たざる経営」「小さな本社」……。バブル経済崩壊後の日本企業は、向かい風の中で歩みを進められるように、とにかく“ぜい肉”をそぎ落とし、身軽に、スリムになろうともがいてきた。資本と経営の分離が進んで株式投資のリターンを強く求める「もの言う株主」の声が大きくなり、効率重視の経営を迫られた面もある。

経営の「免疫力」を保つ

 しかし、その後次々と訪れたリーマン・ショックや東日本大震災、そして新型コロナ危機などの未曽有の災禍によって明らかになってきたのは、予測不能な外部環境の激変を乗り越えるために、企業は「ヒト・モノ・カネ」の面で、ある程度、“筋肉の上の脂肪”を蓄えておいた方がよいということだ。

 人間は、ダイエットを重ねて体脂肪を過度に減らしてしまうと、同時に免疫力も低下してしまうことが知られている。同じことが企業にも当てはまるのだろう。

 PART1では、独自の経営哲学で、危機への耐性を高めてきた「ぽっちゃり企業」のケーススタディーを紹介する。

 本特集における「ぽっちゃり」とは、やみくもに資金をため込んだり、業務に潜む無駄をなおざりにしたりすることを意味するのではない。短期的な収益に拘泥せず、強みを磨いたり、将来の変革に向けて手厚く資源を割いたりする、攻めの経営を指す。危機を生き抜き、持続可能な成長を手にするためのヒントがそこから見えてくるはずだ。

日経ビジネス2020年7月20日・27日号 28~35ページより