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少し前まで資本関係を巡り暗闘を続けてきた日産・ルノーのアライアンス。危機的状況に追い込まれ、地域・車種ごとに役割を明確にする新たな枠組みに踏み込んだ。扇の要だったゴーン氏が不在となり、より合理的な姿を目指す。

ルノーのジャンドミニク・スナール会長(中央)を中心に手を取り合う日産の内田社長(右から2人目)と三菱自動車の益子会長(左端)

 三菱商事が仏ルノー株を10%買う準備をしている──。今春、そんな噂が日本とフランスを駆け巡った。当の三菱商事は否定したが、事情に詳しい関係者はこう語る。「確かに話はあった。フランス側が日産の経営に踏み込んできた時の対抗策の一つだった」

資本面では対等でない状態が続いている
●日仏連合の出資関係

 ルノーは日産に43%を出資している。両社の間には「改定アライアンス基本合意書(RAMA)」があり対等の精神を標榜しているが、大株主ルノーの発言力は絶大だ。昨年4月にはルノー筆頭株主のフランス政府の意向を受けたジャンドミニク・スナール会長が日産に経営統合を提案したとされる。

 株式の持ち合いにおいて、議決権総数の25%以上を保有されている会社は、保有している会社に議決権を行使できない。日本の会社法にはこうした規定がある。三菱商事がルノー株を10%買うというのはこの効果を狙ったものだ。三菱商事は日産傘下の三菱自動車の大株主。日産+三菱グループの日本勢で25%持っておけば、フランス側へのけん制になると考えたわけだ。

 ルノーが統合問題を棚上げしたことで、今はこうした動きも落ち着いているという。ただ、最近まで両社の周辺に緊張が走っていたのは確かだ。

 ルノー、日産、三菱自の3社は5月27日、アライアンスの新たな枠組みを発表した。地域、開発、商品ごとに先導役になる「リーダー」とサポート役の「フォロワー」を決め、従来よりも効率的に投資していくことがその柱。2025年までにこの枠組みを半数のアライアンスモデルに適用し、開発コストを40%減らすことを目指す。

地域でリーダー役とフォロワー役を設ける
●3社が合意したアライアンスの強化策
3社とも2019年度の最終損益は赤字に転落
●ルノー、日産、三菱自動車の最終損益推移
注:ルノーは12月期決算

 地域でみると日産は北米、中国、日本でリーダーとなる。3国を合わせた販売台数は19年度ベースで全体の75%。今後は主力とする市場にリソースを集中できる。ルノーは欧州や南米、三菱自は三菱商事が強固な販売網を持つ東南アジアを担当し、他の2社はリーダーを補佐していく。

 ルノーと日産は14年の時点で、「研究・開発」「生産・技術」「購買」「人事」の主要な4機能を統一するコンバージェンス組織を設立している。ただ、機能統合は簡単にはいかなかった。その1つの例が、今回のアライアンスによる発表であえて「4つを1つに集約する」と記されている、ブラジルのプラットフォーム問題だ。

 日産のブラジル工場は14年、当時の中期計画「日産パワー88」の新興国事業拡大に伴って稼働した。それまで日産はルノーの工場を活用してブラジル市場向けの車を生産。新工場では日産とルノーの小型車のプラットフォームを統一する議論が繰り広げられた。ただ、話は物別れに終わった。お互いが自らの仕様の優位性を主張したため、歩み寄ることができなかったからだ。

日経ビジネス2020年6月29日号 35~38ページより