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404億円の営業赤字。巨額赤字の影で見逃されがちなこの数字が日産の苦境を物語る。新興国への戦線拡大で主力市場の新車投入が追いつかなくなり、ブランド力が低下。古い車で戦わざるを得ない販売が値引きに依存する悪循環が生まれている。

米国の販売店に並ぶ日産の主力SUV「ローグ」(写真=AP/アフロ)
日米中3地域で全体の7割以上を占める
●2019年度の日産の地域別販売台数

 「ローグですか? 3000ドルの値引きでいかがでしょうか」。米ニューヨーク州北部にある日産自動車の販売店。6月初めに連絡をすると、女性の販売担当者はこう切り出した。

 SUV(多目的スポーツ車)「ローグ(日本名:エクストレイル)」の2019年の北米での販売台数は約35万台で、日産の最量販車種だ。自動車専門メディアの米オートモーティブニュースによると、競合車種となるトヨタ自動車のSUV「RAV4」の6月の販売奨励金は0~1500ドル。日産のローグは同1500ドルから3000ドルだった。

 この秋にようやく新型モデルが出るローグは18年末に発売されたRAV4よりも5年も「年長」だ。3000ドルの値引きは約2万5000ドルからの車両価格の1割以上に相当する。新車がそれだけ割り引かれると、中古車の買い取り価格も下がり「安売りのクルマ」というイメージがつく。これが日産が直面しているブランドの毀損に他ならない。

業界平均を上回る「車齢」

 日産の23年度までの構造改革プラン「日産NEXT」では、拡大路線でだぶついた資産の整理を掲げる。車種数を2割、一般管理費を15%減らして約3000億円の固定費削減を計画する。

 問題は稼ぐ力の劣化だ。本業のもうけである連結営業損益は19年度に404億円の赤字(18年度は3182億円の黒字)。新型コロナウイルスの影響が本格化する前の段階で、そもそもの自動車ビジネスで稼げていない。

 なぜそうなったのか。内田誠社長兼CEO(最高経営責任者)の言葉を借りれば「手を広げた上で、きちんと売っていく体制をつくれなかった」。これは販売だけの問題ではない。自動車メーカーに不可欠な開発と販売のバランス。それが崩れ、ひずみが表面化している。

日経ビジネス2020年6月29日号 28~31ページより