全1731文字

14世紀にペストが欧州を襲った際、土地の価値が下落した史実が残されている。不動産はそれを活用する人間の存在があってこそ、初めて価値を生むものだ。人口減少時代を前に、コロナで人が消えた街は、不動産の未来の姿を映した。

オランダの画家、ピーテル・ブリューゲル(父)の『死の勝利』。14世紀のペストを題材にしている。(写真=アフロ提供)

 感染症が流行すると土地の価格が下がる──。歴史的に見て、格差や不平等が是正されるのはどのような時なのかをまとめた『暴力と不平等の人類史』の著者、米スタンフォード大学のウォルター・シャイデル教授の研究では、このような史実がつまびらかにされている。シャイデル氏は、過去の歴史において不平等を是正するきっかけは「戦争」「革命」「国家の破綻」「感染症」であることを、様々な史料を駆使して説明している。

 同氏によれば、14世紀に欧州全土にペストが広がった結果、耕作放棄地が増え、地価、地代が急落したという。農地を耕す農民が短期間のうちに大勢亡くなったため、実質賃金が上昇し、地主と農民の格差は是正されていった。

 どれくらい土地の値段が下がったか、詳細な記録は残されていない。だがシャイデル氏は、欧州と同様に2~3世紀、エジプトでペストが流行した際、流行前と流行後の地代、すなわち借地料が50~60%下落したことを、残された当時の史料などから明らかにしている。

人間あっての「土地の価値」

 近代以前に流行したペストの事例を、医療やテクノロジーが発達した現代社会と比較するのは、いささか無理があるかもしれない。しかし、古来、生産や活動の「場」となる土地は、収益を生む力の大きさに応じて価値を付けられ、取引される点においては現代と変わらない。

 立地や広さ、日当たりといった条件がいくら素晴らしいものであっても、土地を活用する人間の存在や知恵がなければ、土地の持つ力は発揮されず、価値が剥落することを、ペストの流行と地価との関係は物語っている。