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コロナ禍で通りから人影が消え、静寂に包まれた日本各地の都市。人々は街に戻り始めたが、傷口は不動産分野も侵し始めている。熱狂する不動産市況に沸いたあの街の事情も、一夜にして変わってしまった。

「晴海フラッグ」は11社が共同開発する巨大プロジェクト。第2期販売が延期された(写真=PIXTA)

 「デベロッパーから何の連絡もないんです」。東京五輪・パラリンピックの期間中に選手村として活用した後、5632戸の分譲・賃貸マンションに生まれ変わる巨大プロジェクト、東京・晴海の「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」。第1期分譲の高倍率をくぐり抜けて希望住戸の当選を勝ち取った都内の男性はこう打ち明ける。

 引き渡しは2023年の予定で手付金として分譲価格の1割を支払った。ところがコロナ禍で五輪は1年延期。6月上旬に予定した第2期販売の時期も未定になった。「選手村利用→改装→引き渡し」という当初日程は破綻しかねない状況なのに、五輪延期の決定から3カ月になろうとする今も、どうなるのか見通しが立たないという。

 晴海の建設地を歩くと、建設関係者からも戸惑う声が聞こえてきた。後期整備街区として24年3月に竣工するタワー型マンション2棟の着工時期も読めない。住宅部材メーカーの営業担当者は「完成時期の変更などについて何の情報もない。納品量も多いため、工期が確定しないと生産計画に影響が出てしまう」と話す。

 この会社は晴海フラッグの仕事で3億円の売り上げを見込む。それなのに、五輪中止もちらつき始めた。「レガシーとしてのプレミアムが剥落し、マンション価格が下がるような事態になれば、部材の販売価格も下げざるを得なくなる」と懸念する。

渋谷発の脱オフィス

緊急事態宣言が発令された直後の東京都内の風景。人影が消え、建物だけが静かにたたずむ(4月8日に撮影した銀座、渋谷、JR新宿駅、大手町)

 東京・渋谷では近年集積が進むスタートアップやIT企業が、オフィスから逃げ出す動きが出ている。リモートワークの浸透でオフィスはコストに見合う価値がないと見切り始めたためだ。