<span class="fontBold">富士フイルムホールディングス<br> 会長・CEO<br> <span class="fontSizeL">古森重隆</span><br> 2003年CEO。富山化学工業や日立製作所の画像診断事業買収、富士ゼロックス完全子会社化を主導。80歳。</span>(写真=稲垣 純也)
富士フイルムホールディングス
会長・CEO
古森重隆
2003年CEO。富山化学工業や日立製作所の画像診断事業買収、富士ゼロックス完全子会社化を主導。80歳。
(写真=稲垣 純也)

安値だと飛びつくのは早計

 「疾風に勁草を知る」ということわざがある。激しい風が吹いて丈夫な草が見分けられるように、苦難に直面することで人の強さが分かるという意味だ。企業も同じで、経済が安定しているときには業界内での差は見えにくいが、逆風が吹くと差が鮮明になってくる。コロナ・ショックのような危機では、業界再編が起こりやすいと言えるだろう。

 私が身を置く精密業界で再編が起きるかどうかは正直分からない。事務機メーカーは売上高や時価総額などの規模が大きく、買収するには多額の資金が必要になる。ソフトウエアなどのシステムも違うし、単純なシェアを獲得するだけの買収になってしまう。

 今の段階では、富士フイルムとして動くつもりはない。ハードウエアからネットワークやセキュリティーなど必要なリソースはあり、成長できるのが理由の一つだ。ただ、機器の供給やサービス連携などで提携がある可能性はある。

 医療分野では、アビガンを手掛ける富山化学工業や日立製作所の画像診断機器事業など、長い年月をかけて買収してきた。コロナ後の世界で医療を強化する企業は増えるかもしれないが、脅威には感じていない。参入障壁は高いうえ、そうそういい買収案件は出てこないからだ。

 経済危機は価格面などでM&A(合併・買収)の好機。売り込みも増える。だが安値だからと飛びつくのは早計だ。経営者にとって有事に必要なのは物事をよく見ること。直面する課題を分析し、成長に足りないピースが何かを冷静に見極める必要がある。(談)

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