
三越伊勢丹に接近するのは アマゾンかアリババか
「消費はかなり長く低迷し、V字回復は望めない」。三越伊勢丹ホールディングスの杉江俊彦社長は5月中旬、業界の見通しについてこう語った。
その後まとまった大手の5月の売上高を見ると、三越伊勢丹は前年同月比79%の減少だった。緊急事態宣言が解除されても外出の自粛が続いており、百貨店業界は厳しい環境だ。
金融関係者は三越伊勢丹が再編対象になり得ると考え始めている。理由は足元の数字に加え、コロナ以前から指摘されてきた事業モデルにある。
同社は自ら商品を仕入れ、販売まで手掛ける従来の百貨店のやり方の代表企業だ。だが潮流は、テナントから賃料を得てテナントが販売員を置く不動産型モデル。売り場の売上高の変動リスクを受けにくいとされ、17年に全館不動産型の「GINZA SIX」を開いたJ・フロントリテイリングが代表だ。
J・フロントは20年2月期まで3年間の最終損益で毎期213億~285億円を確保した。三越伊勢丹HDは3年間のうち2年間が赤字で、20年3月期の赤字額は112 億円に上る。こうしたこともあり、同社は金融機関に計800億円規模の融資枠を要請した。
外資系ファンドの担当者は三越伊勢丹が買われる場合、その魅力は「銀座や日本橋といった好立地にある」と話す。集客できる潜在力は高く、不動産としての価値もある。さらに「『お帳場』に代表される富裕層のデータベース、優秀なバイヤーも持っている」と話す。
もう一つ、セブン&アイ・ホールディングス傘下にあるそごう・西武も再編対象として名前が挙がる。
「セブン&アイHDのお荷物といわれ、常に身売りがささやかれてきた」(業界アナリスト)。米サード・ポイントなど物言う株主が16年以降、セブン&アイにそごう・西武の売却を求めてきたとされる。19年に大規模なリストラとして5店舗閉鎖を発表。旗艦店が残り、売りやすくなったとの見方もできる。
買収を重ねるタイ企業
日本の名門百貨店の再編はグローバル企業が主導する可能性がある。注目されているのはタイの小売り最大手、セントラル・グループだ。
10年代以降、イタリアやデンマーク、ドイツなどの百貨店を買収した。20年もスイス高級百貨店「グローブス」の買収を発表した。春にはセントラルの中核企業がタイ証券取引所に上場し、同国最大のIPO(新規株式公開)として約2700億円を調達した。これを海外での買収などに振り向ける計画で、いつでも日本が標的になる。
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