資金

国立大法人化は失敗 公的支出が足りない

元東京大学総長、元文部大臣、元理化学研究所理事長
有馬朗人

 私が文部大臣のときに方向性を決めたのが、国立大学の法人化だった。法人化を決めたのは、大学の自主性が生まれるなどの効果が見込めたためだが、実際は、運営費交付金が毎年減らされ、若手研究者の大幅な削減につながってしまった。私はこうした事態になることを読み切ることができなかった。それは失敗だった。

(写真=的野 弘路)
(写真=的野 弘路)

 今やるべき最大の仕事は、運営費交付金を増やす、少なくとも元の水準に戻すことだろう。OECD諸国と比べても、日本はGDPに対する高等教育への公的支出の割合は低い。

 なぜ、日本はこれほど高等教育への支出が少ないのか。こうしたことを東大出身の財務官僚に話すと「先生、またお金の話ですか」などと言われる。政府は、教育熱心な親がいることを前提に、(資金源としての)親を頼りにしているのかもしれないが、それでは不十分だ。

 公的教育への支出を増やして、日本を何とか世界並みのレベルにしなければならないと思う。(談)

ブランディング

強い経営体持ち 社会の「公共財」たれ

総合科学技術・イノベーション会議常勤議員
政策研究大学院大学客員教授
上山隆大

 日本の大学は学生の満足度が総じて低い。なぜなら自分の人生の中で「あの4年間があったから今の自分がある」という場所に大学がなっていないからだ。

 米国の各大学には、「自分たちは強い人材を社会に送り込んでいる」という自負がある。育てたい人材の理想像があり、戦略性を持って学生を鍛えていることも大学のブランドになっている。だから大学が社会の「公共財」であると認知されており、社会からの信頼も厚い。

 日本の研究者のレベルは決して低くないが、大学全体の戦略は弱い。教員のサポート体制の充実や獲得した外部資金の有効活用といったことを一つひとつ積み重ねて大学の評価を上げていくべきだ。社会の役に立てば、企業からの資金や寄付もおのずと集まる。

 実現には強いリーダーシップをもった経営体が求められる。優れている研究者が良い学長になるとは限らない。大学という知識産業をマネジメントできる「経営のプロ」を育てることが必要だ。(談)

キャリア教育

生き方創造の支援を 社会人教育も重要に

昭和女子大学 理事長・総長
坂東眞理子

 長い間、大学は入試で学生をスクリーニングするところに大きな役割を見いだしていた。入学後どういう教育で学生の力を付けるかよりも、入り口での学生の振り分け役になっていた。

(写真=大下 美紀)
(写真=大下 美紀)

 社会の変化を踏まえて、大学は働くことに関して学生と社会のマインドセット(考え方)を変えていく役割を担うべきだ。昭和女子大はかつては良妻賢母教育を基本にしていたが、今は女性も自らのキャリアを意識して働き方を決めることが重要になっている。社会がそれを求めるようになったからだ。2007年に学長になった後、グローバルビジネス学部や国際学部を設けたとき重視したのも、専門能力と働く意識を学生に植え付けるためだった。

 さらにダイバーシティを1つの柱とした社会人教育にも力を入れる必要がある。男性も含めた社会人向けキャリアカレッジだ。大学は専門知識の教育も重要だが、同時に「人生設計」の教育も大事だと思う。それが社会を変えることにつながるはずだ。(談)