東大以外でも改革は進む。人口減とグローバル化、技術進化がそれを促す。日本電産の永守重信会長CEOは私費100億円を投じて独自の改革に挑む。国立、私立とも、もはや生存競争の時代。だが改革次第で大学の評価も高まる。
東大は「経営力」を高め、世界のトップ校として踏みとどまろうとしている。手厚い公的支援は期待薄となる中、経営を改革し教育の質を高めることは日本の大学に共通する課題だ。東大のように世界を意識した改革に踏み込む大学から、存続そのものを懸けた戦いに臨む大学まである。大学の質向上は日本経済の先行きをも左右する。
「18歳人口の減少に加えて、国からの運営費交付金の給付も底ばいが続いている。大学運営は長期的に厳しいと考えざるを得ない」
こう語るのは、北海道の国立大学、小樽商科大学の穴沢眞学長。小樽商大は、道内の国立大学である帯広畜産大学、北見工業大学と2022年4月に統合する。今年3月には、統合後の新法人を「北海道国立大学機構」とし、本部を帯広市に置いて、3大学が傘下に入る方針も発表した。背景にあるのは人口減。1992年に約205万人だった18歳人口は、2000年に約151万人、19年に約118万人に減る。30年には約102万人へ半減すると予想される。
一方で全国の4年制大学は1990年の507校が2018年には782校に増えている。人口減で市場が縮小した上に競争が激化したわけだ。国立大学でも、04年の法人化に伴い国が給付し始めた運営費交付金がその後絞られたため、「経営」は厳しくなっている。
●18歳人口と4年生大学進学率の推移
それでも何とかやってこられたのは、大学進学率が上昇したからだ。1990年に24.6%だった4年生大学進学率は、2018年には53.3%になった。これである程度学生数を確保できたが、さらなる進学率の伸びは期待しにくい。
統合を決めた北海道の3大学は「それぞれ持っていた情報システムを一体化するなどしてコストを少しでも下げる。本部を帯広市に置くのは3大学の中間地点だからということに加え、賃料が安いのも大きい」(穴沢学長)と経費削減の努力は涙ぐましい。
今後は、インターネットによる遠隔授業で、傘下の他大学の一部科目を履修できるようにして魅力を高める。同時に企業との共同研究を増やすなどして、少しでも多くの外部資金を獲得したい考えだ。ただ、経費削減以外の道筋は“希望”でしかない。苦しい戦いは、これからだ。
大学の生存競争の姿は一様ではない。自らの立ち位置に応じた異なる戦いがある。はっきり浮かぶのが私立大学だ。
Powered by リゾーム?