良質な研究環境を確保するには潤沢な予算が必要だ。だが、国の財政悪化で日本の大学は資金確保に汲々としている。押し寄せる「アカデミック・キャピタリズム」の波に、どう抗っていけばいいのか。
東大が産学連携や起業家育成に注力する背景には、大学の「懐事情」も関係している。良質の研究環境を確保するにはお金がいる。しかし、教育・研究活動に必要な基盤的経費として国から支給される「運営費交付金」は、年々減少傾向にある。東大の場合、2000年代初めは年1000億円超あった運営費交付金は18年度、760億円まで落ち込んだ。そのため産学連携で得る企業からの委託金や特許収入、寄付などで600億円超の資金を“調達”している。
かつては「真理探究の場」「学問の自由」が資金面でもある程度保障されてきた国立大学だが、04年の法人化を機に市場原理が適用され、競争力のある、優れた研究にお金が付く仕組みとなった。国はこれまで運営費交付金を11%削減する代わりに、「競争的資金」と呼ばれる、研究課題を公募し優れたテーマに配分する研究資金を増やしている。資金の出し手は財団法人や企業が募る民間のものも多い。産学連携などで獲得した委託金なども、広い意味で競争的資金に含まれる。
研究費「50万円未満」が6割
競争的資金に重点を置くようになった背景には、財源が年々厳しくなる中、より良い研究に手厚く資金を配分して最大のパフォーマンスを上げる方向にかじを切った国の政策転換がある。
ただし、その弊害を指摘する声も大きい。研究計画ありきの厳しい資金獲得競争を生み、若手研究者に向けた研究環境の整備や、基礎研究の充実に支障を来しているとの指摘がある。
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