学内に有形・無形の支援体制

 東大が整備したエコシステムから多大な恩恵を受けた起業家の一人がミドリムシを原料とする製品の開発を手掛けるユーグレナ社長の出雲充氏だ。ミドリムシを大量かつ安定的に培養する技術を基に、健康食品を製造するほか、航空機向けのバイオ燃料を開発してきた。環境意識の高まりとともに、その将来性が期待されている。

 起業のきっかけは出雲氏が東大1年生の夏、グラミン銀行のインターンとして訪れたバングラデシュで現地の食糧事情の悪さに衝撃を受けたこと。帰国して解決策を探っていたある日、後輩が動物性と植物性の両方の栄養素を持つミドリムシの存在を教えてくれた。「これだ」。出雲氏は直感した。

 「ミドリムシで飢餓に苦しむ世界を救う」との大志を抱き、卒業から3年後の05年にユーグレナを興した。12年には東証マザーズに上場、14年には東証1部に昇格した。株式時価総額は691億円(5月29日時点)だ。

 出雲氏は、「創業間もないころ、アントレプレナープラザを利用させてもらうことができ、本当にありがたかった」と振り返る。アントレプレナープラザは各務氏らが07年に本郷キャンパス内に開設した東大発ベンチャー向けのインキュベーション施設だ。事務所として使える29の個室を備える。大半はバイオ実験設備の設置が認められる仕様になっており、出雲氏はここで技術開発に励んだ。

 東大は現在では各地のキャンパスで計4つのインキュベーション施設を運営している。運営を担当する東大・産学協創推進本部インキュベーション担当ディレクターの菅原岳人氏は、「キャンパス内の施設は東大の研究室に近接しており、学生をインターンとして雇いやすいなど、メリットが数多くある」と説明する。

 そんな恵まれた環境の中、第2のユーグレナを夢見る起業家の卵が温められている。

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