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「知識集約型社会」への転換を掲げ、東大が積極的な動きに出ている。財政難から大学の危機が叫ばれる中、大型の大学債発行を計画。資金面でも攻めに。産・官・民との連携も深化させ、新たな大学像をつくり始めた。

(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

(写真=岡田 晃奈)
PROFILE

五神 真[ごのかみ・まこと]氏
1957年生まれ。80年東京大学理学部卒業、83年同大学院理学系研究科博士課程退学。助教授などを経て98年に同大学院工学系研究科教授。副学長、同大学院理学系研究科長、理学部長などを歴任し、2015年4月から現職。物理学者。専門は光量子物理学。

新型コロナウイルスの感染拡大を機に「9月入学」が大きな議論になりました。東大も以前に検討されましたが、どのようにお考えでしょうか

 東大は(1年間を4学期に分ける)4ターム制を導入して、既に秋入学は行われています。毎年、外国人留学生を中心に何百人も入学しています。

 9月入学の議論では「グローバル化を進められる」という利点が挙げられますが、今まさにそのグローバル化そのものが大きな転機を迎えています。それをしっかり見据える必要があるでしょう。2015年に私が総長になって以降、英国でEU(欧州連合)からの離脱(ブレグジット)があり、自国第一を声高に主張するリーダーも増えました。米中の対立も際立ってきています。

 また新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、多くの大学がオンライン授業をしています。オンラインの場合は、世界のどこにいても同じ授業が受けられます。その状況で、海外の学生をどうやって日本に引き付けるか、新しいアイデアが必要です。

 それよりも今、一番大切なのは、学校に行けない学生や生徒の学ぶ機会をどう確保するかです。小中高大、すべての教育関係の人たちはまずはこの難題に集中する必要があります。

日経ビジネス2020年6月8日号 26~29ページより