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景気がいいときはすり寄ってくるが、本業が危うくなるとサッと引いてしまう。自分たちを都合良く使おうとする大企業をスタートアップは冷ややかに見つめる。互いに力を借りて成長する関係を築くために欠かせないのは継続性だ。

(写真=David Madison/Getty Images)

 日本でも新型コロナウイルスの感染拡大が深刻になっていた4月1日、スタートアップも集うシェアオフィス「WeWork神田スクエア」内で、セイコーエプソンがある組織を始動させた。「エプソンクロスインベストメント」。独立系ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレイン(東京・渋谷)と共同で設立したコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)だ。

 CVCの設立はエプソンとして初めて。総額50億円を国内外のスタートアップ投資に振り向ける。4月にエプソンの経営トップに就任した小川恭範社長自らが代表者を務める肝煎りのプロジェクトだ。スタートアップを取り巻くエコシステム(生態系)はコロナショックで急速に冷え込み、とりわけCVCの投資意欲が減退する中、エプソンはなぜ逆張り投資に踏み切るのか。

 「想定する未来がコロナで早まった。CVCを起点とするスタートアップとの協業を急ぐ必要性がある」。エプソンの小川社長は、コロナ禍でもCVC設立に踏み切った理由をこう説明する。

 主力のプリンター事業はペーパーレス化の進展で市場の縮小が続く。コロナ禍で在宅勤務が加速して「個人向けプリンターは売れている」(小川社長)ものの、こうした追い風は一過性の可能性もある。そこで活路を見いだすのが、インクジェットなどコア技術の「水平展開」だ。これまでは自社製品にコア技術を導入する「垂直統合」にこだわってきたが方針を転換。外部企業との協業や外販を加速する。