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イタリア、スペインでの大流行を結束して阻止できず、域内にすきま風が吹く。経済復興でも南北で財政状態が異なり、共同での債券発行などで不協和音。むしろ、国・地域ごとに小回りを利かせて対応する「多極分権」が奏功している。

欧州委員会のフォンデアライエン委員長
欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、4月のEU首脳会議の後に会見を開いた(写真=代表撮影/ロイター/アフロ)

 「イタリアが最も支援を必要としていた(感染拡大の)初期段階で、我々は支援できなかった。全欧州を代表して心から謝罪する」。4月16日、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、欧州議会の総会で異例の謝罪を述べた。

 新型コロナウイルスの流行は、欧州の結束もむしばんでいる。イタリアでは2月から感染が急拡大。患者が病院の受け入れ能力を超えるような「医療崩壊」が起き、死亡者が急増する危機的な状況に追い込まれた。同国は欧州連合(EU)に医療物資などの支援を求めたが、それに応じる国はなかった。むしろドイツやフランスは自国民の保護のために、医療物資を囲い込んだ。

 EUは、大きな危機のたびに結束が揺らいでいる。2015年から中東やアフリカの移民が欧州に流れ込むと、各地で反発が広がり、移民排斥を訴える政党が支持を伸ばした。その帰結の一つが英国のEU離脱(ブレグジット)である。新型コロナではイタリア国民がEUへの不信感を募らせた。3月にイタリアで実施された世論調査では88%が「EUの支援が不十分だった」と答えている。

 欧州は第2次世界大戦後、各国が連帯しながら復興を図る意志を固め、EUの源流となる欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)を設立した。それから68年、新型コロナという激震を機に、欧州の形はどのようになっていくのだろうか。

欧州各国でEUへの反感が高まる
●EUを好ましくないと考える人の比率(2019年春)
EUを好ましくないと考える人の比率
出所:米ピュー・リサーチ・センター