新型コロナの脅威に世界で初めて直面し、強権的な対策で封じ込めた中国。その中で国民の移動履歴捕捉や、デジタル投資の加速といった変化が起きている。近年、IT分野で急成長を見せた中国が、もう一段、ブースターを点火した。
新型コロナウイルスを基本的に封じ込めたと豪語する中国。しかし、流行初期に感染拡大の情報を適切に公開せず新型ウイルスの出現を警告して処罰された医師が死亡した事実は重く、国民の間でも不満が高まった。
だが、そこからの中国政府の変わり身は速かった。厳格な都市封鎖、移動や経済活動の制限を実行し、水際対策と検査を徹底し、ITを駆使してクラスターを見つけ出した。
法の上に一党独裁の共産党が君臨する中国の政治体制。それは、目的のためなら西側諸国の価値観ではあり得ない大胆な施策をためらいなく取れることを意味している。
そのコロナ対策の過程の中で、正と負の両面を持つ様々な「イノベーション」が生まれた。今後の中国社会に大きな影響を及ぼす、それらの変化を見ていこう。

「スマホは? 健康コードを見せて」。3月中旬、上海市内で商業ビルに入ろうとすると、守衛にこう要求された。

健康コードとはスマホ画面上で表示するQRコードで、持ち主の新型コロナウイルスの感染リスクを示す。5月11日に3カ月半ぶりに再開した上海ディズニーランドでも、入場時に提示を求められた。今や、中国各地の様々な施設や公共交通機関で健康コードを確認することが当たり前で、もはや「デジタル通行手形」だ。ここ数年、電子マネー決済の普及で中国ではスマホが手放せなくなっていたが、今はスマホ抜きには自由な移動すらままならない。
健康コードのシステムは地方によって方式が異なるが、基本的には今や中国人なら誰でもスマホに入れていると言っても過言ではない「アリペイ(支付宝)」や「ウィーチャット(微信)」といったアプリを利用する。

利用の流れはこうだ。まず、施設ごとに用意されたQRコードをアプリで読み込むか、アリペイやウィーチャットペイから「健康コード」のプログラムを起動する。するとQRコードがスマホ画面に表示される。コードはリスク程度によって「緑」「黄」「赤」の3段階で色付けされている。緑は基本的に健康に問題がないこと、黄はコロナ感染者との濃厚接触や入国直後などで隔離期間中であること、赤は感染者であることなどを示している。
ポイントは、自分が各種情報を入力するわけでもないのに、リスクが自動判定されることだ。
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