ボーナス大幅カットは不可避

 日本人の収入はこの先どうなるのか。大企業は、危機の際でも「生活保障」の観点からただちに基本給引き下げという手段はとらず、ボーナスカットに踏み切るケースが多い。そこで今回、少なくともリーマン・ショック直後と同クラスのボーナス削減に踏み切ると想定し、2020年の会社員の収入がどこまで減るか試算したところ、40~44歳で年収20万円減、50~54歳で26万円減となった。

 厚生労働省調査などを基に計算すると、大企業(従業員1000人以上)に勤める社員の年収は、月給に夏冬のボーナスを合わせ40~44歳の場合で645万円、50~54歳で756万円。ここから削減幅は3%程度の計算になる。

忍び寄る年収2割減時代
●2019年の年収と、「コロナ後年収」の比較
忍び寄る年収2割減時代<br><small> ●2019年の年収と、「コロナ後年収」の比較</small>
注:厚生労働省調査を基に試算。従業員1000人以上の規模の働き手の年収を比較。コロナ後は09年の大企業のボーナス削減の対応(経団連集計)を基に試算(写真=PIXTA)
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 ただこれについては「その程度で済むはずがない」と思う人の方が多いのではないか。実際、TDRの従業員は、正規・非正規の違いこそあれ、期限付きながら「収入2割減」と同じ状況に陥っている。ラーメン店を展開する幸楽苑ホールディングスもこのほど、5~7月の3カ月分の社員の給与を2割減額すると発表した。

 残業がなくなり所定外給与が大きく減っている人もいるだろう。賃金に占める所定外給与の比率はそれだけで平均8%を占める(厚労省2019年賃金構造基本統計調査)。給与に占める「歩合」の割合が高い営業職の人などは、コロナ対策で当面営業が制限されれば固定給だけになりかねない。観光業界や運送業などでは給与減どころか当面、無収入になる人もいる。

 実際、今回の特集で取材した人の中には、大企業社員も含め、「年収3%減で済む」と考える人より、「現実に一部企業が打ち出している給与2割減の方針が他の産業にも広がり、やがて自分の年収もかなり減る」と悲観する人の方が多かった。

COLUMN

コロナの前から厳しい現実
「転職で所得倍増」の結末

 「給料が低くて、質素なごはんしか食べられない毎日に嫌気がさして転職したんですが……。転職で所得を上げるのがいかに難しいか思い知りました」。そう語るのは、関東地方の医療機器メーカーで営業職として働く原加奈子さん(仮名、29)。曲折を経て、新卒入社したメーカーに「出戻り」することにした。

 医療機器メーカーに入社したのは約6年前。月給は額面で20万円ほどで、家賃は月5万円。生活費に余裕はなく、転職を決意したのが3年前だ。

 再就職には成功し2017年春、友人の紹介で医療系ITサービスの営業職に就くことに。給与は額面で10万円ほど増加した。だが「なぜ契約が取れないんだ!」と怒号が飛び交い、社員が手に電話機をガムテープで縛りつけて営業電話をかけ続ける光景を目にして会社を去った。

 次の職場は知人の紹介で、都内のコンサルティング会社で、営業のアシスタントや財務・総務業務などを担当することになった。給与は前職と変わらず額面で30万円ほどだったが、ここでも長続きしなかった。

 結局、古巣の会社の同僚に相談を持ち掛けたところ、すぐに社長から「海外展開を考えているから、戻ってこないか」と新規事業の担当を打診された。結局、月給は前職より減ったが、原さんは「前の会社に戻れただけ、自分は幸運だ」と話す。

 新型コロナウイルスの感染拡大で転職市場にも大きな影響が出つつある。企業の人事・採用支援を手掛ける人材研究所の安藤健氏は、「コロナ・ショックで多くの企業は新規採用を絞る。転職希望者は増えるが、採用が減る。今後しばらくは『買い手市場』が続くだろう」と話す。

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転職市場にも再び氷河期が訪れるのか(写真はイメージです)(写真=PIXTA)

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