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送料問題で出店者だけでなく公正取引委員会や世間からも批判を浴びた楽天。巨人・アマゾンを追うためには欠かせない改革が、中小出店者を中心に離反を招いている。携帯事業はリスクを抱えるだけに、EC事業でつまずけば「楽天経済圏」の理想も遠のく。

 「誠に心苦しいことではございますが、2020年3月からの送料無料化に伴いハッピーペッパー楽天市場は2020年3月13日(金)をもちまして閉店させていただく事になりました」──。

 ペットフードやグッズの販売店「ハッピーペッパー」は2月、出店していたEC(電子商取引)モール「楽天市場」からの退店を決めて店舗ページで顧客向けにこう告知した。

 この店だけではない。和装品販売の「仕立て屋 山冨久」は3月の退店に際し、「送料統一企画に関し、運送料金やコストの増加に伴い、弊社が送料無料の対応を致しかねる事が原因」と明記していた。

ワークマンにディズニーストアも

 1997年にオープンした国内マーケットプレイスの草分け的存在に異変が起こっている。中小店舗の離脱だ。震源は、当初3月18日に一斉スタートの予定だった「送料無料ライン一律3980円」サービスだ。

 離脱は中小店舗にとどまらない。2月にはワークマンや「ディズニーストア」、3月には「カルディコーヒーファーム」など大手も楽天市場の店舗を閉じた。ある古参の出店者は「楽天の役割はもう終わった。これからは自社ECを強化する」として「楽天卒業」の真相を打ち明ける。

自社ECに切り替える動きが広がる
●楽天市場への出店を取りやめた主な企業
(写真=日刊工業新聞/共同通信イメージズ)

 楽天が国内ECとして1強を誇ったのは過去の話。今では米アマゾン・ドット・コムはもちろん、「ヤフーショッピング」や自社ECなどを出店者が使い分け、選別する動きもある。

 プロテインなどサプリメントの販売を手掛けるパワースティション大阪(堺市)の朝倉潤社長は3月13日に楽天市場の店舗を閉じた。「安く売れるアマゾンの売り上げが楽天市場の10倍以上になった」とその理由を説明する。

 楽天は出店者の規模別に月額の「出店料」や「システム利用料」などを提示しているため一概に比較できないが、店舗維持のコストは「楽天は売り上げの15%、アマゾンは10%程度」という。EC事業者は様々なオプションによって費用が追加されるため、朝倉さんの店舗に限った話だが、同じ商品を同じ価格で売った場合、アマゾンより楽天の方が利幅が小さくなる計算だ。

楽天市場の出店料は固定費が高い
●ECモール各社の主な出店コスト
注:各社のホームページを基に作成

 朝倉さんはヤフーショッピングの店舗やアマゾンへの出品は継続している。「送料無料化など楽天は一方的に押し付けてくるが、ヤフーやアマゾンは出店者に選ぶ権利がある。そこが大きな違いだ」(朝倉さん)

 ヤフーショッピングは出店料や売り上げのロイヤルティーはゼロ。もちろん何もしなければなかなか売れない。販売促進のために広告を出稿するかどうかは店舗側の自由だ。ただ、出店料やロイヤルティーの負担がないため、広告も打ちやすいという。

日経ビジネス2020年4月20日号 34~37ページより