新秩序1:都市のオフィス需要は減退

 社員が来ないなら、オフィスに人数分の机はいらないのではないか──。2016年から、約30人の社員が全員テレワークで働くシステム開発のシックス・アパート(東京・千代田)。同社が在宅勤務を初めて取り入れたのは、11年の東日本大震災後の電力不足がきっかけだった。使用電力削減という努力目標を満たすため、まず週1回のペースで開始した。

 だが電力不足が解消した後も週1回のテレワークは継続。16年、EBO(従業員による買収)により株主が変わったタイミングで、毎日できるように規定を変えた。すると、毎日会社に来る人数が激減。古賀早CEO(最高経営責任者)は「もっと小さいオフィスでもやっていけるのではないか」と確信した。

 その直後に引っ越した新しいオフィスは、広さも家賃も4分の1。引っ越し前は社員30人に業務委託先の従業員を加え、50席を用意していたが、新しいオフィスは10席まで絞った。オフィスは主に月1回の社員集会や顧客対応、会議などに使う場所となり、光熱費は約10分の1になった。社員には通勤定期券の代わりに、月1万5000円のテレワーク手当を支給している。

 新型コロナによるテレワークの広がりによって、シックス・アパートのような決断をする企業は着実に増えている。

 「テレワークする人が増えてきたので大きなオフィスは必要ない。物件を見直したい」。SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)など賃貸物件の仲介を手掛けるジョイライフスタイル(東京・大田)には最近、企業経営者などから、こんな問い合わせが寄せられるようになっている。

 「リーマン・ショックの時にも、SOHOなど小さなオフィスに移りたいという声はあったが、コスト削減の意味合いが強かった。テレワークを理由にするのは、今回からだと思う」。山内匠代表取締役は社会の変化を実感する。

 初めからテレワークを前提とした個人向けの不動産を販売する企業も登場している。

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