新型コロナウイルスの影響で働き方や学び方に大きな変革が起きている。突然の変化に戸惑い、課題が噴出している企業や個人も多いだろう。だが、変革はいずれ常識になる。利点に着目し、前向きに捉えるべきだ。

別所美穂さん(左)は会社が手配したオフィスチェアとデスクを自宅で利用。クックパッドは5月末までテレワーク期間を延長する(写真=的野 弘路)
「ここに座ると仕事モードに切り替わる」。3月下旬、東京都内のマンション。約1週間前に自宅リビングに運び込まれたオフィスチェアに座るクックパッドの別所美穂さんは満足げだ。ひじ掛け付きでクッション性がある椅子と、広い作業スペースのある机は、会社が手配してレンタル料金を負担している。別所さんは、ソファやローテーブルなどの体が痛くなる作業場所から解放され「集中できる」とほほ笑む。
2月18日から約350人の全従業員を原則在宅勤務としたクックパッド。当初からモバイルルーターやモニターを貸し出していたが、テレワーク期間の延長を決定した2月末、希望者に椅子と机を手配することにした。
3月末までに、約40人の従業員宅に椅子や机が配備され、かかった費用は計100万円以上。だが、クックパッドの星北斗技術本部長は「もう在宅勤務を一時的なものとやり過ごす状況ではなく、長期化が見えている。オフィスで働いていた時と同じ生産性を出せるなら安い」と、迷いはなかった。
請け負ったレンタルバスターズ(東京・中央)の佐川一平常務は「企業からも個人からも問い合わせが増えている」と話す。同社は急きょ、3月末までに3000脚の椅子を確保した。
需要が高まっているのは自宅向けだけではない。「新型コロナのまん延リスクに備えて、本社機能を分散させたい」。パソコンやWi-Fi機器などオフィス開設に必要な機器を手掛ける同社には、2月末ごろからこんな相談が複数寄せられるようになった。ある不動産会社は「本社で感染者が出たら営業できなくなる」として200人分のオフィスを新たに作ろうとしていたという。
佐川氏は「オフィス分散は、BCP(事業継続計画)として定着する可能性がある」と話す。
大企業を中心にかつてない規模で始まった在宅勤務。現在は外出自粛要請などを受け、「代替手段」として実施している会社も多い。だが長期化するに従い、自宅をメインの仕事場としながら、必要であれば最寄りのオフィスに出勤するといった働き方ができる環境が整いつつある。
新型コロナウイルスとの戦いはなお厳しい局面が続いており、終わりは見えていない。だが、ビジネスの最前線にいる人たちは、すでに新型コロナが社会に及ぼす変化「コロナ・エフェクト」を見定めようと動き始めている。
コロナ・エフェクトで何が起きるのか。まず起きるのは、テレワークの広がりに伴うオフィスの見直しだ。
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