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歴史を変える革新的発明の多くは、異端の研究から生まれている。現在進む「一見変わった研究」も、思わぬ発見につながる可能性がある。極論すれば、狂気的と思える発想も許容すれば真の革新の確率が高まる。

エティエンヌ・ルノアールは内燃機関の燃料として照明用の石炭ガスを採用した(写真左)。交流電力を発明した二コラ・テスラは宇宙人との交信も試みていた(写真中央・写真=アフロ)。ジョン・ハーヴェイ・ケロッグがコーンフレークを開発した動機は、極端な禁欲主義だった(写真右)

 現代医療に欠かせない脳波計。この世紀の発明がテレパシーの研究から生まれたという事実を知っている人はどのくらいいるだろうか。

 発明者はドイツ出身の神経科学者ハンス・ベルガー。騎兵隊の乗馬訓練中の事故で死を覚悟した瞬間、遠く離れた姉が、弟の身に何かあったと感じ、心配のあまり電報を打ってきた。そんなテレパシー体験を機にその解明にのめり込み、研究の過程で1920年代に脳波を発見。脳波計の開発につながった。

 脳波計に限らず、歴史を振り返ると人類の暮らしを変える画期的発明の中には、当時の科学常識に反した異端研究の実践者が生み出したケースが少なくない。現代社会と切っても切り離せない電気もその一つだ。

 現在、家庭のコンセントに流れてくる交流電流のシステムを発明したのは、セルビア人のニコラ・テスラだ。

 交流電流が生まれる前は、大発明家として知られるトーマス・エジソンの電気照明会社(現ゼネラル・エレクトリック)が直流電流で電力系統の事業を進めていた。そこに1884年に入社したのが、テスラだった。

 テスラは電気の損失が少ない交流による電力事業を提案したが、進めてきたシステムを手放したくないエジソンと対立して失職に至った。そして独立後、ウェスティングハウスからの研究費の支援なども得ながら交流システムの機器開発を推進し特許も出願。ナイアガラの滝を利用した発電所建設で、テスラの交流システムが採用された。