リンパ腫という大病を患い、3カ月に及ぶ入院生活と一時離脱を余儀なくされた。無事、復帰を果たした「財界総理」は、終身雇用をはじめ雇用慣行の見直しを強く求める。再成長に向け、日本企業や社会が「やり残していること」を聞いた。
(聞き手は 本誌編集長 東 昌樹)

中西 宏明[なかにし・ひろあき]氏
1946年生まれ。70年東京大学工学部卒業後、日立製作所に入社。2005年北米総代表兼日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST)会長兼CEO(最高経営責任者)、10年日立製作所社長、14年会長。18年5月から経団連会長を務める。19年5月下旬にリンパ腫の治療のため入院、3カ月ほど休んだが、同年秋から復帰。腫瘍が縮小または消滅した状態を示す「寛解」に至ったとし、スイスでの世界経済フォーラム年次総会などにも出席した。
昨年5月に入院され、大変心配しました。体調は万全に近い状態ですか。
昨年4月の10連休の少し前、中国で大きなフォーラムがあり、帰ってきてすぐに今度は米国でした。そのあたりで「何かおかしいな」「何か疲れやすいな」と感じるようになって、食べる量も減っていた。今思えば、体の循環器系が狂い始めていたサインだったのかもしれません。
米国から帰国後、血液検査と精密検査をしたらこれはリンパ腫であると。すぐに入院しましたが、その時点でかなり進行していました。最初のひと月ぐらいは、1日5リットルほどの薬の点滴投与が続きました。いかに体の中から薬を早く排出するか。リンパ腫だけでも薬は40種類あるのですが、私の場合、最終的には試した薬がみんな当たったという感じがします。
ただ、薬の投与が続いていたので、いざベッドから立ち上がろうとしても歩けない。筋肉、筋力が落ちてしまったことが原因です。その点、正直まだ完璧とは言えません。普通の生活には何の支障もないのですが、例えば、片足立ちで靴下を穿くという行為ができない。これほど難しい作業だと思っていませんでした。
「辞任」申し出は指名委がノー
この5月で経団連会長として1期2年、残り2年も全うできそうですね。
私はやりたいわけではないのだけれども……(笑)。
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