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時代の流れの速さに戸惑い、もはや会社に頼り切りでは生きられないミドル。危機感を胸に独り立ちを試みる彼らを後押しするのは、謙虚さと「学ぶ姿勢」だ。自らと社会を理解し会社をも使う「ニューミドル」の台頭が日本再興のカギとなる。

木下紫乃氏(中央)が毎週木曜日に営業する「昼スナック」には悩めるミドルが押し寄せる(写真=竹井 俊晴)

 2月下旬、ある木曜日の昼下がり。その店がオープンするとカウンター席はたちまちミドルの面々で埋まった。東京都港区・麻布十番にある商業ビルの6階。ヒキダシ(東京・世田谷)の代表取締役、木下紫乃氏が毎週木曜日に開催している「昼スナック ひきだし」だ。

 「ママ、ちょっと聞いてよ」。お客さんの呼びかけに、ママこと木下氏が耳を傾ける。主要な客層である40〜50代の悩みは、ほとんどが「自分はこれからどうしていけばいいのか」といったものだ。終身雇用の終焉とともに、キャリアへの不安がミドルを包む。

 話をじっくりと聞き「そっと背中を押す」のが木下氏のスタイル。「私はひとの人生に責任は一切負えない。だけど、自分がやりたいと決めたことには頑張って挑戦してほしいと思う」。会社でも家庭でも、口に出しにくい仕事への悩みだが「知らない人同士だから打ち明けられることもある」という。

 自身もミドル真っただ中という木下氏は2000年代半ばから10年近く、人材企業で大企業向け研修を担当した。だが「企業が変わらないことにやり切れなさを感じた」。45歳で慶応義塾大学大学院に入り、若い世代と視線を合わせる中で「ミドルこそ支援しなければ」と考え、16年にヒキダシを創業した。

 今も企業向け研修はするが「会議室ではなかなか本音が出ない」(木下氏)。そこで、17年に友人の店舗を借り、月2回のイベントを開いたのが「昼スナ」の原型だ。当初は45歳以上の条件付き。告知はSNSだけでも、10席ほどのカウンターはいつも満員御礼となった。

 週一開催となった昼スナはいまや「モヤモヤ系ミドル」の駆け込み寺に。昨年12月には、大手電機メーカーからの依頼を受け、社員食堂での「出張昼スナ」も開催した。

 会社と上司から任された仕事を懸命にこなしてきたが、世の中の変化に取り残されてしまった──。巨大会社のトップが終身雇用はもう維持できないと口にし、各社で数百人単位の早期退職募集が相次いでいる。焦燥感に駆られるミドルは多いだろう。

 では、その状況からいかに脱するか。Part2で紹介したような「キャリアの棚卸し」をした上で、今いる会社に残るにせよ、外に飛び出すにせよ、まずは一歩踏み出す必要がある。

日経ビジネス2020年3月16日号 44~47ページより