育たぬ社員に最も焦りを強めているのは経営者だろう。創業者でカリスマと呼ばれた人ならなおさらだ。どこに問題があるのか。昨秋、8年ぶりにトップに復帰したワタミの渡邉美樹会長(60)が述懐する。

(写真=尾関 裕士)

 「私が会社を去って以降、新しい事業が何一つ生まれなかった。未来を見据えて、成長のための大きな決断ができる人材が育たなかった」

 居酒屋大手ワタミの創業者、渡邉美樹氏が自戒を込めて語る。

 2019年10月、8年ぶりにワタミの代表取締役会長に復帰した渡邉氏。東京都知事選への出馬を理由に11年に代表権を返上し、取締役最高顧問に。都知事選は落選したものの13年に参議院議員として国政に進出。取締役も辞し、経営の一線から長く退いていた。

 「創業以来、私がすべての事業を作り、社員を引っ張ってきた。ワタミを100年企業にするために、この先は私がいなくても、彼らが自立して会社を経営し、成長させられるようにしたかった」

 そんな渡邉氏の思いとは裏腹に、同氏が去った後のワタミは坂道を転がり落ちるように業績が悪化した。過労自殺として12年に労働災害に認定された問題もあり、“ブラック企業”のレッテルまで貼られ、15年3月期には自己資本比率が7.3%と危険水域に低下した。

 09年に渡邉氏の後を継いだすかいらーく出身の桑原豊社長は責任を取って辞任。アルバイトからのたたき上げで介護事業を任された清水邦晃氏が社長に就いた。だが、05年に参入し、100カ所以上で有料老人ホームを展開するまでに育てた介護事業を売却せざるを得なくなる。その後も主力の居酒屋事業の客離れなどが続き、長く減収に苦しむことになった。

 渡邉氏はなぜ、次のリーダーを育てられなかったのか。

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