全2432文字

 「和製テスラ」──。かつてこう呼ばれた企業が京都にある。2010年設立のGLM(京都市)だ。

GLMが開発したEV「トミーカイラZZ」

 「関西圏のサプライチェーンでEV(電気自動車)を作る」というビジョンの下で立ち上がった「京都電気自動車プロジェクト」が前身となり、14年に初代EV「トミーカイラZZ」を発売。16年秋には「想定4000万円」のスーパーカーのコンセプトカーを披露し19年内の市販を目指したが、18年に突如開発中止を宣言した。何が起こったのか。

 GLMは開発資金が必要だったが、国内で必要額を調達するめどが立たず、頼ったのが香港の投資会社オーラックス・ホールディングスだった。17年に約128億円の投資を受け傘下に入った。オーラックスはその後ウィー・ソリューションズに名前を変え、ドイツの車体設計会社などを次々と買収。EV開発のノウハウや技術を外部に販売するグループ戦略において、GLMは中核的な存在を担うようになった。

 ウィー・ソリューションズCTO(最高技術責任者)で19年6月からGLMのCEO(最高経営責任者)も兼務するジュリアン・カー氏は、「(GLMは)自動車だけでなく、ゆくゆくはスマートグリッドのシステムにも貢献できるだろう」と話す。日本発のEVスタートアップ企業を支えたのは、海外のリスクマネーだった。

規制に阻まれ開発中止

 日本では飛躍できなかったEVスタートアップは他にもある。地方の交通課題を解決しようとの思いで2人乗りEVを開発したrimOnO(リモノ・東京・中央)。布製ボディーなどの特徴が話題を集め、商品化を望む声も多かった。ただ、政府が定める1~2人乗り超小型車の規格では「走行許可を受けても市町村をまたいで走れない」など法制度の壁に阻まれ開発を中止せざるを得なかった。伊藤慎介社長は「日本はPL(損益計算書)思考で、やってみないと成果が見えにくいビジネスの実験がしにくい」と語る。

 スタートアップの競争が激しいのは世界共通だが、米国や中国では淘汰を経ながらも有望株が頭角を現している。

 電池や素材など技術の集積がある日本で、なぜニュースターが生まれないのか。背景の一つとして考えられるのは、EVをはじめとする次世代車を「自動車」という凝り固まった枠組みの中で考えてしまう傾向だ。

 象徴的なのが、自動車産業の活性化に取り組む経済産業省の「自動車課」だ。本来ならば、次世代車の開発に不可欠な半導体や通信の「情報産業」に加え、サービスやコンテンツといった産業までを横串でつないで考えなければならないはずだ。それが、自動車課で半導体の話を聞いても「課が違うので分からない」といった答えが返ってくる。これでは、従来型の「自動車業界」という構造に縛られて規制緩和や産業の横断的な連携が進まない。

日経ビジネス2020年2月24日号 48~49ページより