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自動車産業のヒエラルキーが壊れる中で、メガサプライヤーの存在感が高まっている。自動運転や電動化などで先行するために、戦略変更や組織改革にいち早く動く。巨大メーカーから新興企業まで全方位で取引し、あらゆる覇者の最強パートナーを狙う。

電動化など技術革新が成長の原動力に
●日独メガサプライヤーの売上高
注:ボッシュとコンチネンタルは12月期、デンソーは3月期(写真=PIXTA)

 激変期を迎えた自動車産業の“寵児”とも言える企業がある。独部品大手コンチネンタルだ。同社は1871年創業の老舗タイヤメーカーとして知られていたが、1990年ごろから自動車部品関連企業を100社以上買収してきた。

 自動車メーカーはエンジンや機械系が専門の技術者を多く抱える。ソフトなど新技術の習得は難しく、容易にリストラもできない。その点、コンチネンタルは新技術のトレンドを予測してそれに応じた会社や技術を買収。自動車メーカーが頼る巨大部品メーカー(メガサプライヤー)となった。

 同社の2018年12月期の売上高444億ユーロ(約5兆3300億円)は10年前の約2.4倍。世界最大の部品メーカー、独ボッシュの売上高も同期間で2倍になった。トヨタ自動車や独フォルクスワーゲンなどを伸び率で上回る。

日系メーカーに新技術を導入

 「高級車に納入する予定だ」──。

 コンチネンタルのオートモーティブ部門のニコライ・セッツァー取締役はこう言及した。同社が20年末までに量産を始める、最先端の3次元ライダー(LIDAR)。関係者の話を総合すると、日系自動車メーカーに供給するようだ。

 ライダーは光を使って物体の形を精緻に捉える。距離を測るミリ波レーダーやカメラと併用することで「視力」が高まるため、高度な自動運転でのキーデバイスとされている。コンチネンタルは16年に米アドバンスド・サイエンティフィック・コンセプトを買収し、ライダーの技術を取り込んだ。

コンチネンタルはあらゆる企業に部品やシステムを供給し、新技術を磨く。どの企業が市場シェアを高めても、頼られる存在を目指している(写真=デゲンハート氏:的野 弘路、BMW:picture alliance/Getty Images)

 最先端技術で先行するのはどの企業にとっても正攻法。コンチネンタルが強いのは、必ずしも最先端でなくても自社の競争優位を発揮できる技術に狙いを定め、マスを取りにいく点だ。

 「30年までは新車に占めるレベル3の需要は数%にとどまり、レベル2の需要が高まるだろう」。19年7月の記者会見で、コンチネンタルのエルマー・デゲンハートCEO(最高経営責任者)は技術の需要予想を“格下げ”した。同社は数年前まで、運転手が介在しない「レベル3」の技術開発を推進していた。それをあっさりと翻したのだ。

 同社が自動車メーカーや消費者の需要予測を重ねたところ、レベル3への需要は想定ほど高くないことが分かった。例えば高速道路の完全自動運転では、中国では受け入れる意識が高い一方で米国や欧州、日本では高くなかった。常に運転手が注意を払いながらも、精度を高めた運転支援機能や車内モニター機能などを備えた「レベル2プラス」の普及を予測している。

日経ビジネス2020年2月24日号 40~43ページより