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人手不足もあり、高卒採用市場の需給は大卒を上回る逼迫ぶりだ。そんな非大卒者に営業ノウハウをたたき込むなど、教育するサービスに注目が集まる。元ヤンキー、ドロップアウト人材……、隠れた原石が戦力となるチャンスが広がる。

工事用足場レンタルの千歳商会は新卒採用の対象を高卒者に絞っている(写真=栗原 克己)

 JR高崎線の行田駅(埼玉県行田市)から車で10分。工事用足場のレンタルや設置代行を手掛ける千歳商会(東京・台東)「熊谷サービスセンター」の一角で、2人の若者が鉄パイプの束をトラックの荷台に運び上げていた。建設現場で大工や塗装業者など職人の足元を支える資材が大量に置かれている。

 相原圭樹さんと松本奏空さん。2019年春、関東一円で事業を展開する千歳商会に入社した。総合職だが1年目なので足場の仕事を覚えるため、工事現場に派遣されている。

 適切な資材量の見積もりや実際の荷降ろし、さらには足場を組み立てる専門職人のサポート業務まで、何でもやる。入社間もない頃は「職人さんに『げんのうを持ってきて』と言われても、ハンマーのことだと分からず叱られた。話しかけるのさえ怖かった」と松本さんは振り返る。相原さんは記録的な猛暑が続いた19年夏の現場作業が「特に体にこたえた」という。

 総合職である2人は現場の仕事を覚えると「今後は職人のスケジュール調整や現場作業の工程管理といった業務が加わる。さらに(大手住宅メーカーへの)営業を担当してもらうことになる」。育成を担当するビケ事業部人材開発部の小林仁課長はこう話す。

 将来の中核として期待される2人の年齢は19歳。地元の高校を卒業し昨年入社した。同期入社の8人も同じく高卒だ。もともと千歳商会では新卒採用に当たって大学卒も募集していたが、売り手市場が続いていることもあり、近年は大卒からの応募が減少。そこで、17年に実施した18年4月入社の社員を対象とする採用活動から高卒に絞ることにした。採りにくい大卒にこだわるよりも高卒を鍛え上げて戦力化するよう方針を切り替えたのだ。

 大卒社員の中には現場業務を避けたがる者もおり、「高校生は素直で現場作業に対する先入観を持たずに入社してくれるだろう」との思いもあった。しかも大卒者に比べて4年早く就職する分だけ早く育成できる。狙い通り「『乾いたスポンジが水を吸うように』成長していく様子を、目の当たりにしてきた」と小林課長は顔をほころばせる。

日経ビジネス2020年2月10日号 42~45ページより