あなたはなぜ働くのか?日本型雇用が崩れ、会社の永続性に疑問符が付く中、社員が会社に求めるものは変わっている。それは、やりがいと成長の場だ。(写真=共同通信)

(篠原 匡、佐伯 真也、武田 安恵、高槻 芳)

CONTENTS

Part1
「成長機会は社外にもある」 重い腰上げた大企業

Part2
会社を「踏み台」にしてもOK 人材が集まる職場の作り方

Part3
非大学卒をスーパー営業マンに 「ヤンキーインターン」という虎の穴

Part4
人材流動化時代、自分を鍛えるのは自分自身

Part5
編集長インタビュー・野村克也氏(野球評論家・元プロ野球監督)
野村再生工場の本質は「自信の回復」

変わる意識 給料より挑戦

 今年も春季労使交渉、いわゆる春闘の季節が訪れた。ベア交渉の行方もさることながら、今年の注目点は経営側が持ち出してきた日本型雇用の見直しについてどんな議論が展開されるかだろう。経団連の中西宏明会長やトヨタ自動車の豊田章男社長が言及し、一気に焦点として浮上した。

 もっとも、日本型雇用の中核をなす終身雇用や年功序列などの“神話”にしがみつく人は減っている。電機系エンジニアの川口慎二氏(41歳、仮名)は昨年10月、大学院を出てから15年以上勤めた電機大手を退職し、流通大手の門をたたいた。業績不振への不安もあったが、40歳を超えた転職に踏み切ったのは「デジタル化で自分のスキルが別の会社で生かせると思った」からだ。

 厚生労働省の調査では、50代未満の世代別の平均勤続年数(男性)は緩やかに短くなっている。リクルートワークス研究所(東京・中央)が2019年に実施した調査では、働き盛りといわれる35~54歳の正社員のうち実に6割が、1回以上退職しているという。もはや転職は日常的な時代なのだ。

 なぜ職場を替えるのか。エン・ジャパンの19年夏の調査では、理由のトップが「やりがい・達成感を感じない」だった。逆に言えば、挑戦できる「場」を提供することが人材を引き付ける大きな条件だといえる。

 一生同じ職場で働くことが幻想となる中、企業がコストをかけて社員を育てることはもはや期待できない。それでも自分が成長できる職場はどこなのか。変わりゆく働き手の意識に企業は対応できているだろうか。

シニアは延び、若手は短期化
●年齢別の平均勤続年数(男性)
注:2008年以降の「65歳以上」は、「65~69歳」と「70歳以上」を加重平均したもの
出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
「やりがい・達成感」を重視
●退職を考えたきっかけ
出所:エン・ジャパン(有効回答数:1万74、複数回答可)
人材育成への投資は伸びず
●社内教育に取り組む企業の割合と費用の推移
注:年度は調査時点のもの
出所:厚生労働省「能力開発基本調査」
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日経ビジネス2020年2月10日号 30~31ページより目次