中国・華為技術の最新端末を分解してみると、米国製の基幹部品が使われていない実態が明らかになった。米国製品の調達を避ける動きが中国企業に広がる。一方、台湾は中国から投資を取り戻そうとしている。米中貿易戦争が変えるグローバルサプライチェーン。強固に築いた分業の効率モデルは崩れるのか。

(写真=3点:加藤 康)
(写真=3点:加藤 康)
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 「電池が外れない。何でこんな設計にしているんだろう」。中国・華為技術(ファーウェイ)の最上位スマートフォンを分解してみると、使っているはずの米国メーカーの部品を使っていないという異変に突き当たった。

 バッテリーを筐体に固定する両面テープが剝がれにくいのだ。普段はがっちりと固定しながらも、バッテリー交換の際には端のタブを引っ張ると簡単に取れる米スリーエム(3M)製の高機能テープの使用を取りやめていた。

 本誌は日本未発売の「Mate 30 Pro 5G」を中国で入手し、日経クロステックと、スタートアップを支援する「DMM.make AKIBA」の協力を得て分解した。米国製が除かれたのはテープだけではなかった。メイン基板にはファーウェイ傘下の海思半導体(ハイシリコン)が設計したチップが19個実装されている。

 2019年5月、米商務省は安全保障上の懸念がある企業への米国製品の出荷に制約を設ける「エンティティーリスト」にファーウェイを掲載した。同社を追い詰め、ひいては中国の力を弱めるのが米国の狙い。だが、ファーウェイは次々に部品を内製して障害を克服していることを、バラバラになったスマホは示している。

残った米国部品は汎用品

 米国製と確認できたのはクアルコムの高周波フロントエンドモジュール(FEM)とシーラス・ロジックのオーディオアンプ、テキサス・インスツルメンツのアナログスイッチだけ。FEMは5Gなどの無線通信で使う部品を1チップにしたものだが、いくつかの部品を組み合わせれば同じ機能にできる。残りの2つは汎用的なもので在庫処理の可能性が高い。テープにしても3M製がなければ致命的というわけでもない。

 「米国製を使わない体制は整った」(郭平輪番会長)と豪語してきたファーウェイ。その言葉は嘘ではなかった。音声認識技術で時価総額1兆2000億円を超える科大訊飛(アイフライテック)。ファーウェイ同様にエンティティーリストに入ったことについて、本誌の取材に「十分な準備をしてきたので、近い将来に大きな問題はない」と答えた。米中のデカップリング(分断)は既に現実のものになっている。

 ファーウェイが米国の狙い撃ちをかわすカギになったのが台湾だ。ハイシリコンが設計したチップの多くを台湾積体電路製造(TSMC)が受託生産している。デカップリングに対応するために中国は今後、半導体の国産化を進める考え。同じ言語を使い、半導体で高シェアを握る台湾の技術が欠かせなくなる。

 だが今、中国と台湾の関係は冷え込んでいる。

 「701億台湾ドル(約2500億円)以上を台湾の2工場に投資する」。台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業系の液晶パネル・家電大手、群創光電(イノラックス)は19年11月、台湾への巨額投資を発表した。

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