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2012年6月に就任して以来、改革にまい進する津賀一宏社長。Part1のインタビューで口にした「過激にやる」という言葉からは現状への不満がにじむ。パナソニックは変われるのか。再成長に向けてもがいている。

大阪府門真市のパナソニック本社敷地内で実施中の自動運転のライドシェアサービス。車体は、ゴルフカートをベースに作った(写真=2点:今 紀之)

 大阪府門真市のパナソニック本社の一角。大小のディスプレーが映し出すのは本社敷地内に設置されたカメラが捉えた自動運転車の映像や位置情報だ。同社は2019年10月、47万m2の本社エリア内で働く約1万4000人の社員向けにライドシェアサービスを始めた。

 敷地内の1周2.4kmのルートを周回するのは、ゴルフカートをベースに開発した4台のEV(電気自動車)。利用者は専用アプリや専用サイトから予約し、ルート上に設置した4カ所のステーションで乗り降りできる。

 広大な敷地内を社員が移動する肉体的、心理的負担を和らげることだけが狙いではない。自動車メーカーや通信会社、交通事業者などが名乗りを上げる、次世代移動サービス「MaaS(マース)」で、パナソニックが手掛けるビジネスの種を探す実験でもあるのだ。

 周回する自動運転車には、独自に開発したAI(人工知能)を活用した自動走行システムを搭載するなど、最先端の技術がふんだんに盛り込まれている。とはいえ、お世辞にも洗練された外観とはいえない。だが、それでいいのが、今のパナソニック。車の完成度を高めるよりも、どんなサービスを生み出すかが重要だからだ。実証実験でも、利用実績を基に使い勝手の良い運行方法を探ったり、自動運転車に必要な機能を検証したりすることに主眼を置く。

 これこそが、津賀一宏社長が目指してきた「モノ」ではなく、「コト」から発想するビジネスモデル作りだ。実験に取り組む村瀬恭通参与は「自動運転車というモノではなく、まずはビジネスモデルを提示する。これまでにないやり方だ」と強調する。

 パナソニックのこうした実験は、これまでなら事業化が大前提。だが、今回は違う。「失敗してもいい。挑戦を重ねる」と村瀬参与。カタチの見えない新しいビジネスモデルを手探りでもいいから見つけ出そうともがく。

日経ビジネス2020年1月27日号 32~35ページより