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世界最大の消費国である米国。消費者が抱えるひずみの解消でも先頭を走る。はやりの“サブスク”モデルはもはや当然。勝負はその先へと移っている。ミレニアル世代がトレンドをけん引する中、「気持ちの寄り添い方」が最重要のテーマになった。

スマートミラーに自分の姿とインストラクターの姿を重ねながら体を鍛えられる(写真左)、モニターに映るインストラクターやSNS機能でつながる他のユーザーが励ましてくれる(写真右)

 「フィットネスは米国で250億ドルの市場があり、成長している。ただ、フィットネス人口の3分の2は家の中でユーチューブをスマートフォンの小さなスクリーンで見ながら運動している。その状況を変えたい」

 米ニューヨークに本社を構えるミラーのブリン・プットナムCEO(最高経営責任者)は、創業の理由をこう説明する。健康志向の高まりとともに拡大しているフィットネス市場でも、手つかずの「ひずみ」がそこにあった。

 ミラーはその名の通り、インターネット接続機能などを組み込んだ“スマートミラー(鏡)”をフィットネスに活用するサービスを2018年9月に始めた。プットナムCEOは、プロのバレエ団に所属していたダンサー。引退後にフィットネススタジオを開いた経験から、モチベーション向上のカギが運動している自分の姿を映す「鏡(ミラー)」にあると確信した。

 スマートミラーには自分の姿とインストラクターが重なるように映し出される。鏡に登場する「ミラーインストラクター」は、フィットネススタジオの認定インストラクターのほか、元メジャーリーグ選手やバレエダンサーなどのアスリートだ。スマートミラー上部のカメラが利用者の姿を常時撮影し、インストラクターの指示通りに運動しているかを分析。リアルタイムで評価したりアドバイスしたりする。

 1495ドルでスマートミラーを購入し、月額39ドルを支払う必要がある。一見高そうに思えるが、米国のフィットネスジムは入会金約500ドル、毎月の利用料金が200~300ドルというのが一般的だから、年間費用で見ればミラーの方が安上がりとも言える。

 実は、こうしたオンラインフィットネスには競合がひしめく。先駆者として知られるのが、12年設立の米ペロトン・インタラクティブだ。

 「さあ、もっとペダルを押して!」

 エアロバイクなどのフィットネス器具に備え付けられた画面に映し出されるインストラクターから励まされながら、自宅であたかもジムにいるかのような臨場感で運動ができる。

 専用のエアロバイクを2000ドル強で購入し、会費は月額39ドル。毎日最大14のクラスがリアルタイムで配信されているほか、オンデマンドなら1000以上のクラスから選べる。

 SNS(交流サイト)機能も付いているため、仲間で消費量を競い合ったり励まし合ったりできる。実際にレッスンを受けるとアポがなかなか取れないような人気インストラクターをそろえているのも魅力で、時間のない働き盛りの世代に受けている。

AIが意中と意外のコーデ提案

 ミラーもペロトンも、ビジネスモデルの要は月額課金。サービスを利用するハードルを引き下げる、はやりの「サブスクリプション」と呼ばれるものだが、もはや“サブスク”は米国では当たり前。不満の解消やモチベーションを上げる仕組みなど、いかに消費者の気持ちに寄り添えるかが勝負の決め手だ。

 その仕組み作りで注目を集めるのが、アパレルの米スティッチフィックスだ。毎月20ドルを支払うと5アイテムが届き、不要なものは返送すればいい。購入すれば代金から月額料金が差し引かれる。モノがあふれ買いたいものを決められない消費者に、未知の欲しい商品と出合えるワクワク感を提供して人気を博している。

月額20ドルを支払えば、AIが自動でコーディネートした5つのアイテムが届く。購入すれば商品の代金から月額料金は差し引かれる。アクティブユーザーは300万人超に

 スティッチフィックスの強みは、利用者が設定したプロファイルや購入履歴などに基づいて、AIが好みに合いそうな服やアクセサリーを自社・他社のブランドから選び出す仕組み。AIだけでは的外れな提案をすることもあるので、人間が最終的にチェックする。

 スティッチフィックスはあらゆる業務でAIやデータを活用している。服の好みの分析だけでなく、サプライチェーンの最適化や今後流行する服の予測にまで至る。この分析力に磨きをかけるため、米ネットフリックスからデータサイエンティストのエリック・コルソン氏を引き抜いて、経営陣の一員としてAIを担当するチーフアルゴリズムオフィサーに任命した。